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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2021-12-12 【話題の金曜日回、妥協の産物だったのかも】

またまた朝ドラの話題で恐縮でございます。非常に緻密な演出をされていて見応えのある現在放送中の『カムカムエヴリバディ』でございますが、先週の金曜日の放送に、ワタクシ、プリプリッ!でございました。まぁ、こっぴどく叩こうとも思ったのですが、このネタ、二日ほど寝かしまして、少し溜飲が下がった所で書き下ろしております。

ごくごく簡単に、金曜日放送分のあらましをご説明いたしましょう。舞台は進駐軍占領下の日本。ヒロインの日本人女性は、ラジオの英会話番組で英語を覚えただけ。もう一人の登場人物の米兵は、大学の日本語クラスで日本語を勉強。お互いに異国の言葉をおずおずと話しながら理解を深めていくという場面でございます。ワタクシがどうしてプリプリしたかと申しますと、両者のそれぞれ話す異国語が、あまりにも流ちょうで不自然だったからでございます。

さて、チョイト脱線いたしますが、「言葉」というものには、その「術(すべ、技術)」と「情(じょう、感情)」の二つの要素がございます。日常会話では、この両要素を巧みに織り交ぜながら表現をしております。例えば、アナウンサーの話し口なんてのは、「術」に振り切った表現でございますし、赤ちゃんがかろうじて話す言葉は、「情」のみの言葉だったりいたします。

余談の余談ですが、この二つの要素は言葉だけに留まらず、音楽や美術など、あらゆる「表現」と名が付くものには関わっている要素でございますが、まぁそれは置いといて。で、役者なども演技をする際、この二つの要素の配分比率を考えるわけでございます。どんなに激高していても、情に振り切ってしまうと演技が成立しなくなったりする。微妙に二つを織り交ぜているわけでございます。

では、お話を朝ドラに戻しましょう。異国語をおずおずと話すヒロインと米兵。この場合、台本上ではそれぞれ「異国語の“術”」が低いという設定でございます。術が低いと、人はどうやって相手に気持ちを伝えようとするか? そう、情なのでございます。しか~し、ここで新たな問題が! 人というもの、情が高じるとついつい母国語が出てしまうものでございます。と書きますと、これ、その展開が実に気になるワクワクする設定ではございませんか?

ところが、ところが、画面上の2人は、流ちょうに英語と日本語で会話を始めてしまう。ワタクシ、ワクワクした気持ちも醒め、(ドラマなのに)その決してドラマチックではない展開に、15分のドラマの中程で飽き始めてしまったのでございます。まぁそれが、冒頭で申し上げたワタクシのプリプリでございますね。怒っていてもしょうがない。ワタクシ、「どうしてこうなったか?」を推察してみたのでございます。

まず、大きな要因となったのは、米兵役の役者が本業ではないという事。NHKの体操番組に出演していた庭師さんでございます。その体操番組からはもう一人、体操のお兄さんだった人もサプライズ出演しておりますが、こちらは端役なので影響なし。けれど、けれど、この米兵役は重要な役どころ。NHKは「たどたどしい日本語だから、演技の技術はいらないだろう」と安易に起用したのでしょうね。先ほどの術と情の関係を考えれば、術が無ければなおさら情で演じられる役者が必要なのですけどねぇ。あ~あ、分かってないなぁ。

もうひとつの要因としては、このサプライズ出演の庭師さん、実はスウェーデン人なのでございます。日本語は流ちょうですが、逆に英語が訛(なま)っているはず(多分)。イギリス英語とアメリカ英語の違いでも取り沙汰される昨今のドラマ(『マッサン』とか)、この米兵にペラペラと英語を話させるよりは日本語で会話をさせた方が「安全」、とスタッフは考えたかもしれませんよね。

そのスタッフの中でも重要な要因となるのが「演出家」。朝ドラの演出は、何人かの演出家が週単位で回り持ちしております。で、ワタクシが想像するに、この週を担当した演出家とNHKとの力関係。あまり強いことが言えない立場の演出家だったのではないかなぁ? というのも、この週に登場した戦争孤児役の子役が、ほとんど汚されてなくて違和感アリアリ。別の週で登場した別の戦争孤児は綺麗に汚されていて(笑)、演出家の拘りに感服したのですけどねぇ。子役の事務所か親御さんからの、「汚しNG」に従ってしまったのかなぁ。

結論として、NHKから「サプライズ出演」をねじ込まれて、演出家が割を食ったというところでしょうか? 取りあえず庭師さんには無難な演技をしてもらい、芸達者なヒロイン上白石萌音さんの演技でフォローしてもらおう、そんな「超安全策」を取った結果が、ワタクシがプリプリした金曜日の放送だったのかも知れませんね。まぁ、見ていて、分かりやすいと言えば分かりやすい内容でございました。先週・先々週の演出が超緻密だったので、ついついその落差を感じすぎたのかも知れませんね。

長くなってきたので、この辺で終わりましょうか。最後までおつき合い、ありがとうございます。上白石萌音さんは、実は歌の才能も目を見張るものが有るのですが、それはまた別の日のお話ということで。では、では。


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