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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2021-10-11 【抜擢という名のブラック】

今日は方言のお話。松田聖子さんがまだデビュー間がない頃、テレビ番組の本番中に福岡のお友達と電話で会話するというシチュエーションがございました。いつも通りに気取った標準語で話すと思いきや、コッテコテの福岡弁でございました。あの瞬間が、「地(じ)を隠さないアイドル」の起源かもしれませんね。

ワタクシなんかも東京で働いていた時は、普段は気取って標準語っぽい口調でしたが実家の母親と電話で話す時だけミャーミャーの名古屋弁になっていて、同僚の目を丸くさせたものでございます。地方出身者にとって標準語と方言は、時として「ハレ」と「ケ」の区別だったりいたします。

またドラマなどでは、登場人物の成長や回帰、意識の変化などを方言で表現したりいたします。朝ドラとかは典型的でございますね。序盤で方言を話していた主人公が、中盤で都会に出ていつの間にか標準語になっているなんてぇのは、朝ドラあるある。まぁこれは、台詞の多い主役の負担を軽くするという目的なのかもしれません。

伝説のドラマ『おしん』では、ただ一箇所だけ、「ここは方言でお願いしたかったなぁ」というシーンがございます。乙羽信子演じるおしんが、数十年ぶりに生まれ故郷の兄夫婦と再会するシーンでございます。兄夫婦の山形弁に標準語で返すおしんを見て、「ここでおしんの口から故郷の言葉が出てきたら、一年分の過去シーンが、まるで走馬燈の様に沸き上がって来るのになぁ」と思ったものでございます。まぁ、方言が面倒くさいと、乙羽信子さんが拒絶したという可能性もなきにしもあらず。

さて、現在放送中の『おかえりモネ』、題名通り、主人公が故郷に戻ってくるというところにドラマの醍醐味がございます。ところが、それほど「戻ってきた感」もなく終盤が盛り上がっていかないのは、主人公が故郷に帰ってもなお標準語を話しているからではないでしょうか? 地元の地域FM放送なんてのは、方言バリバリでやってこそ地方色が出るのですけどねぇ。これもやはり、撮影スケジュールの関係で妥協した部分なのかも知れません。

ここ数日、新ドラマの番宣で、「芳根京子」さんがバラエティに出まくっております。朝ドラ『べっぴんさん』の主役を演じた時のことを回想し、「とにかく方言が大変だった」と話しておりました。朝ドラ当時、彼女は19才。演技を専門に学んだわけでもない19才の少女が、膨大な台詞を、超ハードな撮影スケジュールで、それも方言でこなす。これはね、もう、「虐待」以外の何ものでもないですよ(笑)!

そもそも、ハードスケジュールで女の一代記を演じなければならない朝ドラって、相当に高度な事を要求されるわけでございます。演技経験の浅い二十歳前後の人を放り込んだりしちゃいけない演目なのでございます。撮影現場で段取りが崩壊したこともございましょう。2018年頃からのNHKの働き方改革で、現場はますます逼迫したはずでございます。

逼迫が有ったのかどうかは分かりませんが、朝ドラは2020年から、それまでの週6話から週5話に減っております。また、2018年の『まんぷく』の「安藤サクラ」さんを皮切りに、主演者にはそこそこキャリアのある人が選ばれるようになっております。現在放送中の「清原果耶(19才)」は特例なのですが、今回はオリジナルストーリーということで一代記としておらず(老け演技が必要ない)、NHKの配慮が伺えるのでございます。

やはり、朝ドラでの「方言」というのは、演じる人に取って大きな負担になっております。いっそ、最初からその方言を喋れる人を抜擢するようにするべきでございますよね。本人も楽、現場も楽、観ている方も楽、ウィンウィンではないですか? うら若き女優さんが、朝ドラ抜擢という名のブラック撮影環境にこれ以上放り込まれないためにも、いかがなものでしょうか? ではでは。


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