店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです
日本大好きな外国人ロックギタリスト、「マーティー・フリードマン」をご存じでしょうか? バラエティ番組などにも時々出演しておりますので、顔を見れば「あぁ、この人か」と分かるはずでございます。そのマーティーが日本好きになったきっかけを、彼自身がYoutubeで話しておりました。そこで彼が披露したのが、エレキギターで弾く『リンゴ追分』でございます。
驚愕したのは、彼の耳の良さでございますね。ギターで奏でる彼の『リンゴ追分』は、そのコブシや独特なビブラートなど、全く「美空ひばり」さんのそれを完璧にコピーしているのでございます。これはすごい才能ですよ。NHKがコンピュータで美空ひばりを再現するという企画がございましたが、それよりもマーティーの方が「美空ひばりっぽい」というのも驚きでございます。
その美空ひばりさんはというと、これまた似たような逸話がございます。あの美空ひばりがスタンダードナンバーの「スターダスト」を歌っているのでございますが、これがまた、「ナット・キング・コール」の歌うそれと全く同じ。多分、ナット・キング・コールを聞いて耳コピーされたのでしょう。一節には、美空ひばりさんは楽譜を読めなかったとか。いやぁ、これだけの才能があれば、楽譜は必要ありませんよ。
でね、楽譜が読めない、と言うか、一度も楽譜を見たことがないピアニストがいらっしゃいます。「辻井伸行」さんという盲目のピアニストでございます。17才という若さでショパンコンクールの「ポーランド批評家賞」を受賞という才能の持ち主。Youtubeとか覗いてますと、彼の演奏がゴロゴロ転がっております。こりゃぁCDが売れなくなるはずでございます。
ワタクシが彼の演奏を聴いていて感じるのは、「小節」を感じさせないということ。小節というのは、4拍とか6拍ごと(など)で楽譜を区切る単位でございますね。なまじっか「楽譜」で曲を覚えていると、音楽を「ビジュアル的に思い出そう」としてしまう。頭の中に楽譜を描いてしまうのですよね。その結果、無意識のうちに「小節」「フレーズ」といったひと区切りでまとめようとしてしまうのでございます。
多分、辻井伸行さんの頭の中には、楽譜は無い。耳で聞いたものをそのままダイレクトに覚えているのでしょう。彼の頭の中では、どんな感じで音符が拡がっているのでしょうねぇ。青空に浮かぶ雲の様に見えているのか? あるいは大海原に波打つ無数の起伏の様に見えているのか? まぁこんなのも、目が見える人間の想像でしかありませんよね。
辻井伸行さんは、「吐き出すように」音楽を奏でる。止めどなく奏でる。それを聴いている聴衆は、その間中、止めどない滝の水に打たれているような感触に陥る。小節やフレーズでまとめるなんて小さな事はせず、ひとかたまりの音楽をぶつけられている感触。「芸術は爆発だ」という岡本太郎さんの言葉が頭をよぎる。楽譜ではなく、耳で曲を覚えているからこそ到達した境地なのかも知れませんね。