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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2020-04-23 【年功序列なんて日本だけ】

数日前の日本経済新聞デジタル版の記事から。

あの世界のSONYの新入社員の雇用形態が、変わって来ているそうでございます。単純に申しますと、人事部による一括採用をやめ本人の希望の部署別に採用し、最初から実力主義の能力給で横一線の初任給を廃止しているとのことでございます。

日本の伝統的な企業形態ですと、まず人事部で一括採用、研修後に各部署に配属という流れでございます。よく有るのが、本人の希望しない部署に放り込まれるという状況。そして、初任給は横並びで、能力に応じて給与差が出始めるのは、入社数年後からというのが一般的でございます。

日本経済新聞の記事にもありますが、これは「会社=ムラ社会」という日本的な全体主義が要因。そして、日本独特の「終身雇用」「年功序列」という形態を生んでおります。世の中がまだアナログで、アナログ的な技術や経験が持てはやされた時代にはこれでうまく回っていたのですが、デジタルの時代に入ってからは、いろいろと日本の競争力を下げてくれている面倒な要素となっております。

そもそも日本のメーカーってのは「一社完結」がモットーでございました。デザイン、設計から、製造、販売、広告まで、すべてひとつの会社の中に抱え込んでいるという形態。ところが今や、メーカーはデザインだけをして、設計や製造、販売、広告等はそれぞれに特化した別会社に外注を出すというのが世界的な流れ(Appleとか)。その方が、世界の速い動きに対応し易いからでございます。逆に、一社完結の日本企業は小回りが利かず、もはや世界的な新製品を送り出せる企業ではなくなっております。

アナログな時代には、自社の「技術」を守るという点では、一社完結が理想的だったのですよね。ところがデジタルの時代では、「技術」とか「企業秘密」と言ったものは「部品」の中に閉じ込められている。もはや企業ぐるみで守る必要はなくなっているのでございます。

一社完結の日本の家電メーカーが軒並み凋落している一方、日本の「部品メーカー」は世界中にシェアを伸ばしております。高い技術力に加え、世界中から来る細かい発注に対し小回り良く対応出来ているからでございます。これを見ても、既に一社完結なんて時代遅れなのでございます(キッパリ)。

さて、お話をSONYに戻しましょう。SONYの採用試験では、面接の際に70のコース(部署)から本人に選択させ、部署ごとに個別採用、そしてその希望通りに配属させるということでございます。採否は人事部に任せっきりにせず各部署の幹部も加わると言うことで、これはもう、各部署が独立して採用しているようなものでしょう。

新入社員は能力に応じて1から9までの等級が付けられ、入社3ヶ月後には給与差が発生するとのこと。「無等級」なんてことも有るそうでございます。等級の違いによって、新卒でも200万円近い年収差になることもあるとか。等級は常に降格・昇格するそうで、途中から逆転することも可能。もうね、完全な自由競争の世界でございます。

一社完結が時代遅れだと分かっていても、いまさら「解体」するわけにも行かない。そこで、巨大な会社組織を残したままで、社員の雇用形態を部門ごとに特化することでなんとか世界的な流れに合わせて行こう、小回りの利く企業にしようというのが、SONYの狙いなのでしょうね。やはりデジタルの時代には、デジタルに精通した若い人がより稼げるべきなのでございます。


さてさて、当店でもかつて、報酬システムが大きく変わるという時代がございました。もうね、SONYの件とそっくり。昔のニューハーフ封建時代の頃は、うちのお店の報酬も年功序列でございました。新人で入って来た時が一番バック率が低く、長く勤めるほどに、少しずつバック率が上がっていくというシステムでございました。

かつては、長年接客をしてきた人、あるいは体の改造度が高い人、こういう人がお客様から重宝されてましたから、年功序列のシステムもあながち間違いでは無かったのでございます。ところが、女装子・男の娘の時代になると、必ずしも経験や体の改造度が重宝されるわけでは無くなって来た。この流れを受けて、ある時期から、これを、全員一律の金額にしたのですよね。新人も中堅もベテランも、全く同じバック率にしたのでございます。

ここで問題になったのは、中堅、ベテランの人の中には、新しいシステムにするとバック率が下がる人が出てくることになる。これは、その人達のやる気を大いに削ぎますから、極力避けたい。そこでどうしたか? ダブルスタンダードでございます。新しく入った人には新しいシステムで、長く居る人には古いシステムを適用。ダブルスタンダードというのはあまり宜しくないのですが、ここは本人のやる気優先で、お店が少し「泣けば」いいことでございます。

SONYでも、新古のダブルスタンダードが生まれて困ったのではないかなぁと、想像したのでございます。日本経済新聞の記事によると、給与システムの改革に先立ち、全社員の4割を占める「名ばかり管理職」をリストラしたとのこと。う~ん、会社も社員も「泣いて」おりますねぇ。まぁ、その結果、SONYは赤字経営から黒字に脱出。当時の平井一夫社長の勇断の結果でございます。

あらら、今日も長くなっちゃいましたね。では、この辺で失礼いたしましょう。SONYの例を一つの手本として、日本の他の家電メーカーも返り咲きをしてもらいたいですよねぇ。では、では。


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