店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです
人気商売ってのは、一般社会とはちょっと違った感覚の人付き合いが有ったりするものでございます。一般社会の感覚で「良かれと思って」やった事が、逆に人間関係の軋轢になったりすることも有りまして、そんな事象に出会いますと、ワタクシなりに心を痛めるのでございます。
よくワタクシは、うちのお店をプロ野球のチームに例えるのでございます。チーム全体として「試合に勝つ」という目的はございますが、各選手が他の選手と競り合っているという状況も同時に有るわけで、この「選手同士がライバル」という状況が、チームのあり方を複雑にしちゃうのでございます。
想像してみて下さいませ。まぁまぁ優秀な成績の選手「X」がいたといたしましょう。もう1人、そこそこのキャリアだが成績が伸び悩んでいる選手「Y」がいたといたします。Xから見ると、Yの欠点がありありと分かる。ついつい、アドバイスをしたくなる。してしまうと、どうなるか? XとYとの信頼関係が希薄だと、問題につながるのでございます。
Xはチーム全体の競争力を上げるために、「良かれと思って」アドバイスをしたかもしれません。しかし、欠点と指摘された部分は、Yにとっては「個性」という認識なのかもしれない。その個性を活かした上で、Yは伸び悩んだ成績なりにそれでうまく行っていたのかも知れない。じゃぁ、Xはどうするべきだったのか? Xは「見て見ぬふりをする」が、実は正解なのでございます。
普通に考えると、アドバイスをしてチーム全体の競争力を高めた方がいい。一般社会では、普通にそう考えますよね。でも、人気商売の多くでは、それが問題に発展する。その理由は、「コモンセンス」に有るのでございます。
さぁ、「コモンセンス」なんていう雲を掴むような言葉が出てきましたよ。いろいろなシチュエーションで使われるコモンセンスという語ですが、この場合は「共有された価値観」といった感じでしょうか。チームの全員で持っている同じ価値観、それがそのチームのコモンセンスなのでございます。
「チームが試合に勝つ」ということに関しては、選手全員が思っている事。だからそれはチームのコモンセンスでございます。しかし、プレイフォームやフィーリングといったことは、各選手独自の価値観を持っておりますので、その部分に関してはコモンセンスが存在いたしません。
つまり、コモンセンスが有る部分に関しては、意見しても共感が得られやすい。でも、コモンセンスが無い部分に関して言及する事は、お互い利害関係の有るライバルですから、問題へと発展するのでございます。じゃぁ、コモンセンスが無い部分は、いったい誰が言及するのか? それは、利害関係の外にいる、コーチや監督ということですね。
こういうの、ワタクシは、舞台の世界で痛い思いをしております。小さな劇団だと、みんな同じ飯を食っている仲間で、コモンセンスの固まりのような人間関係でございます。ところが、商業演劇のような一般公募やオーディションで集まった人達ですと、上記の様なコモンセンスの有る部分と無い部分が発生してくる。小劇団に居た頃の感覚で人に意見すると、実に大きなしっぺ返しを食らうのでございます。
まぁ、うちのお店も、オープン当初の人数が少なかった時には、メンバー全員が同じコモンセンスで染まっておりました。しかし、現在のように、様々なキャリア、様々な年代、様々な女装に至るプロセス、そんなものが入り乱れておりますと、このコモンセンスの有る部分、無い部分の見極めが重要になってくるのでございます。はぁ、難しいねぇ、人気商売ってのは。