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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2018-11-19 【笑う門にはナントカ】

西原理恵子さんの漫画で、『ぼくんち』という名作がございます。漫画の舞台は世の中の底辺と思しき街。その街に住む、姉、兄、弟の3人兄弟が主人公でございます。底辺の街に住む人々が、やはり底辺の様な暮らしをしつつ、皆、何か守るもののため、何か愛するもののため、輝かしく必死に生きる様を描いている作品でございます。

「生きる」って何だろ? 「家族」って何だろ? 「愛する」って何だろ? そんなことを考えさせられる作品でございます。最後のシーン、弟は遠くの親戚に預けられることになります。兄弟3人がバラバラになり、船の上から、弟は遠ざかって行く街を眺め、こんな事を言うシーンで、この作品は締めくくられております。

「こうゆう時は、笑うんや」


当店の様な人気商売は、忙しい日もあれば、暇な日もございます。ワタクシ、当店のコンパニオンに重ねていつも言うのは、「暇だった日こそ、笑え」ということでございます。忙しかった日にニコニコ出来るのは当たり前。あえて、暇だった時にそれを行えと言っているのでございます。

心が沈んでいる時、落ち込んでいる時ってのは、ついついそれを表情に出してしまうもの。実は、それって「救済」の表れなのでございます。弱い心が壊れそうになる時、「私の辛さ、苦しさ、みんな分かってぇ~」と助けを求める無意識な行動なのでございます。

そんなとき、ワタクシが「笑いなさい」なんて声をかけますと、「この人、何言ってんだ? 笑える様な気分じゃねぇ」という無言の抗議が顔に表れたりするものでございます(笑)。辛い時に笑うというのは、相当なエネルギーを使います。強くなければ出来ないこと。そう、強くなって欲しいという願いが有って、「笑いなさい」と声をかけるのでございます。

苦しみを顔に出してアピールしてしまう人といのは、どこか心に弱さを持っていて救済を求めてしまうのでございます。この弱さが、人気商売ではいろいろ裏目に出る。それで、ますます苦しくなる。顔に出す。裏目に出る。ほら、悪循環に陥るのでございます。

例えるなら、強い心というのは大きな豪華客船、弱い心は小さなボートといったところでしょうか。お客様に豪華客船をイメージさせられれば、それは「安心」とか「癒し」につながるのでございます。逆にボートでは、まぁ不安感を与えないまでも、なかなか癒すということは難しくなる。

コンパニオンが若ければ、小さなボートでもお客様は十分に楽しんで頂けるのでございます。だから、若い内はあまりこういったことを考える必要は無い。しかし、中堅・ベテランとなるに従って、お客様はより「癒し」を求めるようになる。すると、乗る船の大きさが重要になってくるということなのでございます。

辛い時に笑うというのは、心を鍛えるトレーニングなのですよね。楽な時にはこのトレーニングは出来ない。つまり「辛い時こそ、心を鍛えるトレーニングの絶好のタイミング、ラッキー」ということ。そして、このトレーニングが、ボートを乗り合い漁船にし、フェリーとか豪華客船に変えていくのでございます。

余談ですが、震災の時など、お笑い系の番組がこぞって放送を自粛いたします。けどね、笑いのエネルギーが、明日への活力とか希望につながる事も有るのですよね。風災害や震災の多い日本、辛い時の笑いを単に不謹慎と片付けるのではなく、それを「笑いによる鼓舞」という認識が有っても良いと思うのでございます。いかがなものでしょうか? では、では。


『ぼくんち』

西原理恵子著 小学館 全三巻(各970円+税)
 文庫版もあり


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