店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです
今日のニュースで、懐かしい法律の名称が出てまいりました。「優生保護法」でございます。重度の知的障害のある女性が、10代で不妊手術を強要されたことに対し訴訟を起こしたのでございます。その女性は現在60代とのこと。ほぼ半世紀前、現在の感覚では想像し難い法律が存在していたのでございます。
優生保護法の起源となるのは「優生学」「優生思想」といったもの。「人類の優秀な遺伝子のみを後世に残そう」という考え方であり、古代ギリシャから存在した思想ではございますが、20世紀に入ってから、アメリカやドイツで盛んに支持されるようになったのでございます。そんな流れもあり、日本でも戦後間もなく、優生保護法という法律が制定されることに。
優生保護法が猛威を振るっていた頃は、大勢の「劣っている」と判断された方が強制的に避妊手術などを受けさせられたのでございます。今から思えば人権問題でございますが、当時は当たり前の考え方でございました。いやはや、法律というものが、いかにその時どきの”世間の気分”で制定されているかということでございます。
この優生保護法が改正され、優生思想に基づく条項が削除され、名称も「母体保護法」と改められたのが1996年。そう、つい最近まで残っていた法律なのでございますね。で、ワタクシ、この優生保護法には、別の形で関わっているのでございます。
性転換手術を合法的に認める法律「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が制定されたのが、2003年。ということは、この法律が出来るまでは、国内での性転換手術は違法行為でございました。性転換手術だけではなく、キンタマを抜く手術も違法。当然ワタクシは、その違法行為の当事者となるのでございます。
この性転換手術やタマヌキ手術を違法とした根拠が、旧優生保護法の第28条。「何人も、この法律の規定による場合の外、故なく、生殖を不能にすることを目的として手術又はレントゲン照射を行ってはならない。」という条項でございます。健康な人の生殖機能を失う手術は御法度という意味でございます。
この条項、母体保護法に改定される際に無くなったのかなと思いきや、今も残っているみたいですね。まぁ、性転換手術に関しては別の法律が出来ましたので、現在、性転換手術が母体保護法で罰せられる事はございませんし、そもそも母体保護法は、医師への罰則でございます。
性転換が合法になる前は、性転換手術やタマヌキ手術は違法だったというのは、先に申し上げたとおり。ですので、国内でのその様な手術はアンダーグラウンドで行われる事になり、それで逮捕された医師などもございました。ワタクシがタマヌキ手術をした際も、医師から「あなたが最後で、今後は受けないつもりだから、誰かを紹介とかしないでね」と釘を刺されたものでございます。
今、性転換手術を希望している人は、優生保護法なんて時代があった事、知らないでしょうねぇ。ニューハーフという世界がアンダーグラウンドの世界で、チョイト背徳的な空気があった時代。その時代に生きたニューハーフは、ある意味、極道者。ただ、そんな背徳感のあった時代の方が、ニューハーフは「文化」として輝いていたように思えます。