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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2017-11-20 【平等、悪平等、正義、過保護】

小学校の時のある美術の先生の言葉が、未だに鮮明に記憶の中に残っております。

「もし、自分の部屋に絵を飾るなら、
 どんなに安い物でもいいから、
 レプリカや印刷などではなく
 『オリジナル』を飾りなさい」

という言葉でございます。何十年もこの言葉が脳裏に焼きついておりまして、美術品に接するときには、「オリジナル」の重要さをいつも意識しております。

さて、名古屋城再建の話がどんどん進んでおります。昔の図面を利用して創建時のオリジナルの形に限りなく近づけることに、ほぼ決まった感じでございます。当初はそんな懐古趣味を疑問視もしていたワタクシですが、オリジナルに拘った本丸御殿の成功を横目で見るに、こりゃ「有りだな」と思えてきたのでございます。

そこで、ある問題が発生しております。オリジナルまんまということで、「エレベータは設置しない」という方針が発表されております。これに「異議あり!」と声を上げたのが、障害者団体。エレベータの設置の要望が入ったのでございます。

現状では、階段にリフトを設置するという折衷案が出されております。戦前の名古屋城内部の写真がいくつか残っておりまして、写真を見るに、リフトが付けられそうな階段ではございます。しかし、そのリフトを使っているときには、一般の利用者は勾配の急な危険な階段を使うことになり、これまたひと波乱起きそうでございます。

名古屋城のお話はまたゆっくりすることにいたしまして、今回はバリアフリーのお話。「オリジナルの形に再建する」と言っているのに、「エレベータを付けろ」と言ってくる人達、こんなの、どこまで行っても平行線で不毛な議論でしょ。ワタクシ、障害者団体の要望の入れ方にも、少し苦言を呈したいと思うのでございます。

障害者の権利や人権が、ことさら注目される時代になっております。その追い風を受けてというのも有るのでしょう、言ったもん勝ち的に、何でも要望を入れようとする傾向がございます。この名古屋城のエレベータに関してもそう。そこで、こんな考え方は出来ないでしょうか?

スロープやエレベータ、こういったものは都市部では必須の設備となっております。公共の施設で新築されるものは、ほぼ必ず設置されております。でもね、もうそろそろ、こういったバリアフリー設備に対して、「優先度」を設けるべきだと、ワタクシ、思っております。

利用頻度の高い「駅」などは、当然優先度高めでございます。区役所などの建物も、当然。こういった施設は、スペース的に余裕があり、一般の使用者の利便を損なうことなく設置できますので、導入もやり易いのでございます。

では、店舗や商業施設はどうか? 既存の建物に導入するという場合、スペースの関係で難しいというのは、よくあることでございましょう。それでも設置するとなると、大がかりな改修工事になり、個人では難しくなる。さらに、その費用を回収できるのかという大きな問題もございます。

そして、名古屋城の様な観光地、観光施設はどうか? 風光明媚な場所、自然がそのまま残っている場所、その様な場所は、景観の問題もありましょう。また名古屋城の様に、建物のコンセプトとバリアフリーが完全に相反する場合もございます。

バリアフリーの本来の趣旨は、障害者や高齢の方の社会生活参加への障壁を取り除くことでございます。バリアフリーを問われるときには、この「社会生活への参加」を指針として、優先度を決めるべきだと思うのでございます。

駅や役所は、代替物が無い。当然、最優先でございます。店舗や商業施設はどうか? スーパーなどは優先度が高くなりますが、一方、高級料理店は優先度が低くなる。その店に行かないと社会生活が出来ないというわけでは無いですからね。

そして、観光地・観光施設。障害者や高齢の方も、観光くらいしたいですよね。この場合は、一般の使用者の利益との折衷となってしまう。バリアフリーにしても、それを不快だ不便だと思う一般の人が圧倒的に多ければ、優先度は低くなる。バリアフリーの必要な方には申し訳ないですが、ここは観光収入で成り立つという観光地の大前提が有るのでございます。

バリアフリーの必要な方、こういう考え方はどうでしょうか? 行く機会の少ない場所のバリアフリーが見送られたとしても、その予算が駅などの整備に使われるとしたら、結果的に自分の生活にはプラスになると考えるのでございます。限られた予算、自分にとって優先度の高い場所から使ってもらった方がいいでしょ。

この「言ったもん勝ち的な要望」はLGBT関係でも見受けられるのですよね。何でもかんでも権利を主張するという前に、一歩引いて、全体の利益を眺め回す余裕が欲しいと思っております。では、では。


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