店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです
Eテレの『オイコノミア』という経済学の番組がございます。先日の放送の内容が、非常に興味深かったのでございます。「経済学で考える、人生は運か努力か?」というタイトルで、「運」というものを経済学的に分析していたのでございます。
人は成功した時、その成功が「運」なのか、あるいは自分の「努力」なのかを考えるのでございます。大抵は、「運」と「努力」の両方が作用しているものでございますが、そのどちらにウェイトを置くかというのは、本人の個性に因るのでございます。
ここで、経済学的に面白い統計が有るとのこと。税収入的には「運」にウェイトを置く人が多い方が、社会が潤うのだとか。運で成功したと考える人は、納税や寄付をし易いそうでございます。逆に自分の努力にウェイトを置く人は、納税や寄付に関しては財布の紐が固くなるらしいのでございます。
さて、ここで、ワタクシ的に、客商売での「運」と「努力」の関係を分析いたしましょう。サービス業、特に客商売というのは、「運」も「努力」も両方とも必須なのでございます。特に最近は、お客さまの流れが予想しにくい。ですので、「来店」というのはある意味「運」なのでございます。その運が巡ってきた時に十分な接客が出来るかは、日頃の準備、つまり「努力」なのでございます。
運が良くお客さまに恵まれる人も、日頃の努力を惜しんでその運を取りこぼすこともございましょう。また逆に、日頃の努力を重ねても、なかなか運に恵まれない人もございます。そういう人は、どこかで心が折れてしまい、少ない運を取りこぼすやも知れません。運と努力、どちらに偏ってもうまく行かない。客商売は、バランス感覚が必要なのでございます。
これとは別に、商売にはもっと大きな運のうねりがございます。1ヶ月とか、半年とか、あるいは1年とか数年とか。そんな大きな周期の「運」「不運」の波が有るのでございます。この周期は、やはり読めない。今のうねりが、いつ、うねり返すのかは商売の神様しだい。では、この大きなうねりに、「努力」がどう絡んでくるのかお話しいたしましょう。
経済学において「運にウェイトを置く人は、納税や寄付をし易い」というのが冒頭のお話。これを客商売的に言い換えますと、「納税や寄付」に当たるのは「投資」でございます。つまり、「運を信じる人は、投資をためらわない」「運を信じない人は、投資が出来ない」ということになるのでございます。
商売は、運だけでもダメ、努力が必ず実るとも限らない。運が巡ってきた時に適切に投資することが必要なのですが、それも必ず成功に繋がる保証は無い。いやぁ、不確実性理論満載なのが商売なのでございます。ただ、その「投資」さえも出来ないと、その後の不確実性どころか確率はゼロになるわけでございます。
「運」を信用できない人は、「ここぞ」という時に「投資」が出来ないのですよね。この「投資」、必ずしも大きな額ではございませんよ。「運」の種類や大きさによっては数百円かもしれない。投資をためらわない人は、小さな運であろうと常に投資を続け、その内のいくつかが大きく実を結ぶかも知れない。投資が出来ない人は、常にためらい続け、運を取りこぼし続けるのでございます。
「投資」って書くと、株や不動産の様な何か大きなものを想像しちゃうでしょうが、ここでいう投資は「自分への投資」。服を新調するとか、アクセサリーを買うなんてのも自分への投資。上質の商売道具を調達するとか、知識を身につけるために本を購入するとか、それが必要となった時にためらわずに手に入れようと出来ること、それが投資なのでございます。こうやって書くと、自分への投資ってのは、ある意味、「努力」でも有るのでございます。
そして、投資ですから、無駄に終わることもある。「投資できる人」というのは、最初からこの「無駄になる可能性」を折り込み済みで投資している。たった1つの投資で元を取ろうとは考えておりません。いくつかの投資の中で何かが当たり、トータルでプラスになればいい、そう考えるのでございます。