店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです
これがね、使い始めて数週間でビリッといったのなら、「この不良品目が!」としか思わないのでしょうが、年月を経て、少しずつ変化していったもの、そしてその変化に自分が関わっている物は、やはり情がわきますよねぇ。
少しずつ変化というと、楽器がそうでございます。ワタクシは、グランドピアノと電子ピアノを両方持っておりますが、どうも電子ピアノの方は情がわかない。何年使っても、どれだけ弾き込んでも、楽器の方に変化が起きないというのは、逆に何か自分が機械に合わせている感が生まれてしまうのでございます。
ピアノってのは、ピアノ線の大変な張力を支え続けております。また、鍵盤は木材で出来ており、断続的に圧力や応力の刺激を受けております。金属はわずかながらに変形をしていきますし、木材は、やはり変形や乾燥をしていきます。その変化の過程で、「落ち着きのいい方向」へ馴染んでいくのでしょう。
「管楽器は人に貸さない方がいい」と、よく言います。管楽器は特に使っている人の癖が楽器に付きやすく、他人に貸すと、変な癖を付けて戻ってくる場合があるからでございます。逆に、使い込むほどに、その持ち主の癖に馴染んでくるということでもございます。管楽器というのは、鍵盤楽器以上に、人と楽器との一体感が強くなるのでございます。
鍵盤楽器、管楽器と来ましたから、次は弦楽器のお話をいたしましょうか。アメリカの研究で、バイオリンの新旧を比較した研究がございます。300年前のストラディバリウスと現代に作られた楽器とで、演奏者にはどちらか分からないようにして弾いてもらい、良いと思われる楽器から順に点数を付けていってもらうという実験でございます。
この実験は2010年と2012年の2回、行われたそうでございます。12台の楽器を10人のプロの演奏者が弾き比べるということですので、まぁまぁ客観的な実験であると言えるでしょう。で、その結果は、ほぼ、現代の楽器の方が好得点を得るということになったそうでございます。
今まで非常に評価の高かったストラディバリウスですが、楽器としての「旬」を過ぎてしまったということでしょうか? バイオリンというのは、木製で非常に繊細な作りをしております。300年も経てば、木材そのものの寿命かもしれませんよね。何億円も出して購入した人は、これからその楽器の名残を楽しむということになるのでしょうか?
ストラディバリウスが劣化したと考えるよりも、現代の楽器製作の技術が進んだということかもしれませんね。ただひとつ言えるのは、弦楽器・管楽器というのは、自分の手に馴染んでいるかどうかが、大きく影響するものでございます。演奏者との「相性」で、その楽器のポテンシャルが引き出されることもあるわけで、この実験の結果だけで判断は出来ないですよねぇ。