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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2017-04-24 【静心、大好きな言葉】

バスタオルを乾燥するために、大きな乾燥機を使っております。すぐにフィルターがモッサモサになりますので、紙製のフィルターを定期的に交換いたします。そのついでに、フィルターを押さえているプラ製の網もお掃除いたします。

お店の窓はビルの9階。窓の外へ向かって、その網をフッと拭いてやりますと、フワフワの毛玉たちがフワッと飛び出していいきます。ほんのわずかな陽の光の上昇気流を受けて、その毛玉たちは目の前にしばらく浮かんでとどまってくれます。空中で静止する毛玉たちは、まるでマジックショーの演出の様。

そして、次第に、ゆるやかな風に乗って、ばらばらな方向へ漂っていきます。ほぼ真下にグルグル回りながらゆっくり落ちていくもの。軽いものは、激しく上昇して、あっという間に消えていく。また、風に乗って、大きく旋回しながら、ゆっくりと遠ざかって行く毛玉もございます。

小さな毛玉ですが、漂っていくのを目で追っていくと、意外に遠くの方まで目で追えることに驚かされます。どこかの家の庭に漂着するもの。遠くのマンションのベランダに飛び込んでしまうもの。グルッと大きく回って、戻ってきてしまうもの。毛玉をフッと吹く度に、その毛玉がどんな旅をするかでいつもワクワクさせられます。

風が弱く陽の光が差しているときの乾燥機のフィルター掃除には、こんな楽しみがございます。そんなポカポカした春の日を、歌人「紀友則」はこの様な歌にしたためております。

久方の光りのどけき春の日に しず心なく花の散るらむ

のどかな春の日に、慌ただしく散っていく桜の花を惜しんだ歌でございます。「しず心(ごころ)」、「静心」と漢字で書けば、意味は明白ですね。「落ち着いた心」という意味。「しず心なく」と否定の語をつけて、落ち着かないとか慌ただしいという意味になります。

ワタクシは、漂う毛玉を眺めて「静心(しずごころ)」になりますが、紀友則は、舞い散る桜の花びらを見て、逆に「静心なく」と表しました。これは一説に、静心ないのは紀友則ではなく「桜の木」そのものであるとする説もございます。静心なく花を散らしている桜の木を、紀友則は誰かに重ね合わせたのでしょうか?

そんな桜の花も、東海地方では、すっかり開花時期を過ぎてしまいました。まだ、東北や北海道では、これから見られる様でございます。そちらにお住まいの方、お花見に行かれましたら、こんな「静心」「静心なく」のお話も思い出していただければ、より楽しめるのではないでしょうか。そして、花の宴で、先ほどの紀友則の一首でも講じれば、格好つけられますよ。


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