店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです
「ごめんなさい」「すみません」という語がございます。もちろん、これらは「謝罪」の言葉でございます。しかし、日本語というのは不思議なもので、人混みの中をかき分けたり、ちょっと人を呼び止めたりする場合にも、これらの言葉が使われます。今日は、そんなお話。
本日放送されたEテレの『オイコノミア』という番組が「謝罪の経済学」をテーマにしておりました。その中で紹介されたのが「アイムソーリー法(Sorry Law)」というもの。事故などが起きたときに最初に発せられる謝罪の言葉は、その後の訴訟で証拠としては採用されないという趣旨の法律でございます。
このアイムソーリー法の発祥がアメリカだというから、驚き。しかも1980年代から提唱され、現在では36州ほどが制定しているというから、さらに驚き。「アメリカでは、交通事故を起こしても、絶対に自分から先に謝ってはいけない、自分の過失を認めてしまうから」とよく言われてきたものでございます。そんな”アメリカあるある”とは裏腹に、こんな法律がすでにアメリカでは進められていたのでございます。
冒頭でも述べましたように、日本語では謝罪の意味ではなく、ちょっとした儀礼的な言葉として「ごめんなさい」や「すみません」を使う場合も多いのでございます。この様な語が”口癖”になっている人もいらっしゃるはず。まずへりくだる事からコミュニケーションが始まるのが日本語の基本形なのですが、それが欧米などでは訴訟の証拠として扱われてしまうのでございます。
ただ、このアイムソーリー法が日本であまり知られていなかったのは、アメリカではこの法律、多くの州で「医療過誤に限る」という限定条件が付いているからではないでしょうか。番組「オイコノミア」によりますと、このアイムソーリー法の施行後は「医療過誤の訴訟件数は16%〜18%減少」、「和解までの時間は19%〜20%早くなった」とのこと。
逆に言いますと、ほとんどの州では、交通事故などの一般の訴訟では、最初の謝罪がその後に証拠として採用されてしまうということでございます。まぁ、欧米では、「ごめんなさ(I’m sorry)」が口癖になっている人は、要注意でございますね。
ここで、チョイト思い出したのが、お笑い芸人が車を運転中にタクシーと接触し、そのまま逃走してしまった事件。あれも、最初にまず謝罪があったならば、あれほどの大騒ぎにはならなかった気がいたします。企業のクレーム処理なども、まず最初に丁寧すぎるくらいに謝罪をいたします。
初期の謝罪の仕方で、その後の対応やコストが大きく変わってくるものでございます。訴訟大国のアメリカでは、このアイムソーリー法に関しては各州が細かく条件を設定しております。謝罪の言葉の中に”自分の非”を認める内容があったら、それは証拠として採用するという州もございます。初期の謝罪が、いかに微妙で重要な意味を持っているかということでございますね。
日本では、医療裁判により、多くの医師が疲弊しております。裁判を恐れて急患の受け入れを拒否したり、あるいは裁判になりやすい科の医師のなり手が少なかったりという問題がございます。最善を尽くしてもダメだったという手術もあるでしょう。日本も、医療過誤に限ってでもいいので、このアイムソーリー法を導入して頂きたいものでございます。実際に、アメリカでは効果が出ているのでございますから。