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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2017-02-11 【儚いから、より美しい】

雪がチラホラ舞いましたが、大事には至りませんでしたね。都市部では、ほんの少しの積雪で大騒ぎになります。この程度の雪で、助かったのでございます。さて、その雪で、子供の頃のこんなことを思い出したのでございます。

小学生の頃、親を拝み倒して顕微鏡を買ってもらったことがございます。小さい顕微鏡でございましたが、光学メーカーが出しているちゃんとしたもの。当時のは下に鏡が付いていて、被写体の下から光を当てるしくみになっておりました。ですので、光を透過するものしかうまく見えませんでしたが、それでも片っ端から色々なものを拡大して見ておりました。

そんな顕微鏡小学生の日々に、ある日、一大チャンスが訪れたのでございます。名古屋では珍しい雪が降ったのでございます。図鑑でしか見た事がない「雪の結晶」を、自分の顕微鏡で見られる。もうね、興奮気味に、外へ出て行って、雪を取りに行ったのでございます。

室内に運んだ雪を、急ぎプレパレーションガラスに乗せて、顕微鏡で覗く。慌ててピントを合わせるも、何も見えない。ふとプレパレーションガラスを見てみますと、ガラスの上には水滴しか残っておりません。室内の気温で、あっという間に解けてしまったようでございます。

そこで、顕微鏡を持って、外へ。外で何度か試しているうちに、顕微鏡もガラスも冷えてきて、雪が解けにくくなってまいりました。雪が多すぎてもダメ。絶妙な少量の雪をガラスに乗せ、ピントを探りながらガラスの位置合わせをする。位置とピントが全て合致した瞬間、丸い視野の中に、一瞬、雪の結晶が見えたのでございます。

図鑑で見るような、きれいなきれいな結晶でございました。ほんと、雪印のロゴ、そのまんまの形。興奮した次の瞬間、丸い視野の中で、その結晶は溶けていったのでございます。1秒もなかった。0.5秒くらいでしょうか、そのきれいな結晶が見えたのは。

その時は、寒さに負けて、それで室内に戻ってしまいました。雪の結晶を顕微鏡で確認したのは、それが最初で最後。その顕微鏡も引っ越しか何かの際に失ったまま。もう何十年も経過しておりますが、今だにこの雪の結晶の出来事は、はっきりと思い出されるのでございます。

子供心に感動したのは、雪の結晶の美しさもさることながら、それが解けていくときの儚(はかな)さを目撃したからではないでしょうかねぇ。寒い野外で、何度も何度も試して、やっとやっと目撃できたものが、ほんの一瞬で消えていってしまった。その消えていく瞬間が、なんとも言えず美しく儚かったのだと思うのでございます。

この小学生の体験の後、10年以上経過した後、ワタクシは大学の演劇部に入っておりました。その演劇部の先輩がワタクシの演技を見て、「君は耽美主義なんだね」とポツリと言ったのを、今でも鮮明に覚えております。「儚いからより美しい」という感覚、ワタクシは幼少期の顕微鏡で身につけたのかも知れません。

雪が降ると、いつもこんなことを思い出します。では、では。


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