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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2016-05-22 【外科医って、ほんと手術好きだよね】

最新号の『女性自身』(5/31号)のある記事に、非常に興味深い一節がございましたので、そのお話をいたしましょう。「中山秀征の語り合いたい人」という記事でございます。今週号のゲストは「はるな愛」さん。そのはるな愛さんのこんな言葉を引用いたしましょう。
(はるな愛)「私はそれまでの悩みは、体が男なのがすべての原因だと思ってたんですね。女になったら全部解決するし、悩みもなくなると思ってたんです。(中略)でも問題はそういうことじゃないところにも多々あるし、人間関係や人生の悩みは性のせいではなかった。(後略)」
ワタクシは、大勢の性転換したニューハーフを見てきているのと同時に、性転換手術を目指して気苦労を重ねている女装の方々もいろいろ見てきております。そして、そういう気苦労をしている方には決まって、このはるな愛さんの告白とほぼ同内容のアドバイスをしております。

”ニューハーフというお仕事”が軌道に乗っている人が性転換をするのは、あまり問題にならないのでございます。しかし、自分の人生に迷われている方が性転換手術を考える場合、その心理的背景には「これをすれば全て解決する」と思い込んでいる節がございます。しかし実際には、体の一部の形が少し変わるだけで、手術前とは何も変わらない。むしろ、不便になることが大幅に増える。そして、ますます険しくなったご自身の人生に悩み続けるという方も、時々いらっしゃいます。

実は、性転換をした結果、ますます自分の人生を苦しいものにしてしまい、自殺あるいは自殺未遂にまで至るという人が、世界的に増えてきております。これには、「性転換ビジネスモデル」(ワタクシの造語ですよ)なるものが存在するのも、原因の一端かもしれません。「カウンセリング → ホルモン療法 → 診断書 → 美容整形 → 性別適合手術」という流れを、「ビジネス」にしている病院があるのでございます。この様な風潮に対して、今年の3月に、日本のGID(性同一性障害)学会にある動きがございました。GID学会が、性同一性障害に関する「認定医」を9人ほど選出したのでございます。(2016/3/21付 毎日新聞朝刊)

これはこれで、ひとつの進歩だとは思いますよ。しかし、問題の根源は、まだ別のところにあるような気がいたします。それは、性同一性障害の”治療”には、「ホルモン療法」「性別適合手術」が”必要”と考える医師が多いことでございます。本当にそうでしょうか? そこで、こんな考え方はどうでしょう?

「足や手や目に障害がある」という場合、そのような障害者への対処はリハビリがメインでございます。つまり「障害のある体であっても、いかに健常者に近い生活が出来るようにするか」というのが目標でございます。ところが、ところが、こと「性同一性障害」に関しては、リハビリという概念は全く無い。どの医師も「性適合手術」を最終目標としている。これは、ほんとにおかしなことでございます。性同一性障害という”障害”を抱えた上で、いかに社会生活に折り合いを付けていくか、そういうアプローチの仕方があるべきだと思うのでございます。

「性転換でこの患者は救われる」と考える医師がいて、「性転換をすれば、自分の悩みが全て解消される」と考える患者がいて、この両者がマッチングすれば、もう他の選択肢はございません。しかし、これはすごく危険なこと。なぜなら、性適合手術は「後戻り」が出来ないからでございます。こういった軽薄なマッチングの末、時に、さらに悩みを増やしてしまう人を作り出してきたというのは、前述のお話。

日本のGID学会は認定医を選出しましたが、アメリカなどでは、もう少し進んでおります。「手術を最終目標とせずに、本人が障害を受け入れた上で、出来れば手術をせずに社会生活が出来る道はないかを模索する」。こういった考え方をする医師も増えてきております。これは、アメリカでは、性転換後に自殺する人が徐々に増えてきているという背景もございます。

性転換手術というものが一般人の手に届くものになってしまったために、医師も患者も、この数十年間、この手術を”乱用”してきた感がいたします。これからの時代は、むしろ手術を回避する方向に変わっていくのではないでしょうか、と、まぁ、勝手に想像するわけでございます。このような悩みを持つ人がいたら、ちょっと、こんなことも考えてみてくださいませ。では、では。

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