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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2010-11-20 【高級オーディオ機には、今でも大きな音量つまみが】73.95kg

先日、ピアノの調律のお話しをしましたが、その調律師さんから「ヤマハ・オータム・ミュージック・フェア」という催し物の招待券を頂きまして、本日の午前中、吹上ホールまで行ってまいりました。ミニコンサートも有ったようなのですが、時間の関係で聴くことが出来ず、陳列品のクラビノーバとエレクトーンをいじり倒してきました。エレクトーンは、足鍵盤がなかなか思うように踏めなくて苦戦しておりましたら、エレクトーンの説明をしてくれていたお姉さんが、横から足を差し入れて足鍵盤のアシストをしてくれたのでございます。ちょっと変則的な“連弾”でございますが、そばで見ていた人からすると、かなり異様な雰囲気だったかもね。アハハ。

しかしまぁ、最近の電子楽器はボタンの多いこと。何から何まで横にいたヤマハのお姉さんに聞きまくりでございます。ああいった楽器を直感で使えないというのは、ワタクシも年を取ったのでしょうかねぇ。昔の電子楽器は、ひとつのボタンにひとつの機能が割り当てられ、機能の数だけボタンが並ぶという感じでございました。電子楽器のデジタル化が進みますと「モード」という概念が生まれまして、ひとつのボタンがモードによって別々の働きをするようになる。「マンマシンインターフェースの複層化」でございますね(アッ、今ワタクシが思いついた言葉ですから、自慢げに使うと、恥をかきますよ)。

この「マンマシンインターフェースの複層化」は電子楽器だけではなく、デジタル技術を使っているもののほとんどが影響を受けております。例えば携帯電話で言いますと、あるキーがモードによって、電話番号入力、文字入力、メニュー選択と、機能がコロコロ変わるわけでございますよね。限られたキーに多くの機能を盛り込もうとするためでございますね。逆に、あえてこの複層化を避ける家電製品もございます。例えばテレビのリモコン。出来るだけひとつのボタンにはひとつの機能にとどめようとする傾向がございます。すると、必然的にボタンの数が多くなっちゃう。それで、使用頻度の少ない余ったボタンをカバーの下に隠すなんて工夫をしておりますよね。分かりやすさを最優先する設計なんだと思います。

アナログの頃のシンプルな操作系を「第1世代」と呼ぶのならば、デジタルの「モード」の概念の操作系は「第2世代」呼べますでしょう。そして今、マンマシンインターフェースは「第3世代」に入ろうとしております。タッチパネルの普及でございますね。デジタル化の「モード」という概念が直感による操作を難しくしているのですが、タッチパネルですと、モードの切り替わりで画面ごと変わってしまいますので、ユーザーはモードの切り替わりを直感で感じ取ることが出来、また操作に関する十分な説明を画面から得ることが出来るのでございます。スマートフォンやiPadを使わないという人でも、銀行のATMでお馴染みですよね。この第3世代のインターフェースの登場で、機器のボタンの数は益々少なくなってきております。

その「第3世代」のインターフェースが、最近面白いことになっております。銀行のATMなどのタッチパネルは、きわめて機械的に反応いたしますよね。ところが、同じタッチパネルでも、iPhoneやiPadの操作系は、出来る限りアナログ的な感覚を再現するように設計されております。スライドスイッチ、つまみ、シリンダーといったアナログ的なインターフェースを画面上でシミュレートしているのでございます。しかも、スライドスイッチはバネで引き戻される感覚があり、シリンダーは回すと慣性力が働いているかのごとく動作いたします。機器の内部ではデジタルで処理されているその操作が、人間との接点ではきわめてアナログ的な操作感を重要視しているのでございます。

デジタル技術の恩恵を受けてきたものが、結局最後には、アナログ的な操作感に回帰するというのは面白いです。「直感で操作できる」ということを追究するとアナログ的な操作感に行き着くということは、そのような操作感が、人類の長い歴史の中で人間のDNAに刻まれちゃっているのかもしれませんね。すると今後の流れは、きわめてアナログ的なものを高性能のデジタル技術でシミュレーションする、そんな機器が増えていくのでしょうかねぇ。本日触ってきた電子楽器も、生楽器、特に管楽器の音をかなり生々しく再現しておりました。管楽器の音というのは、シンセサイザーが一番苦労する分野だったのですが、これもデジタル技術の進歩の恩恵でしょうね。

そうそう、この「マンマシンインターフェースの第○世代」なんてのも、今ワタクシが思いついたことですので、他人に自慢げに話すと、恥をかきますからね、念のため。


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