店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです
「役者は親の死に目に会えない」。ワタクシの母親の口癖のひとつでございました。ワタクシの母親は、幼少時に“松竹”の子役をやっており、女優を経て女剣劇までやった人でございました。母親のこの言葉をけっこう耳にした覚えがございますので、多分、ワタクシの母親は親の死に目に会えなかったのではないでしょうか。
ワタクシも若いころミュージカルをやっておりましたので分かるのですが、役者というのは何があっても舞台に穴を開けることが出来ない。たとえ端役のエキストラといえども、ダブルキャストでない限り、ひとりでも欠けると舞台が成立しないのでございます。自己管理が出来、舞台に穴を開けないというのは、役者にとっては絶対必要条件なのでございます。
松平健さんの奥さんが亡くなられたそうですね。心よりご冥福を申し上げます。松平健さん、奥さんの訃報を知らされたとき、博多で公演中でございました。その日の舞台を終えるやいなや、博多から東京の自宅へ飛び帰り、奥さんの顔を確認すると、きびすを返してまた博多へ戻ったそうでございます。次の日の公演に出演するためでございます。
奥さんの葬儀は、12月に入ってから行うそうでございます。松平健さんのこの行動には様々な反応があるようですが、ワタクシは役者として至極当たり前の行動だと思っております。ワタクシも舞台に立っていたとき、「もし今、母親が倒れても、行けないな」なんて思っておりましたし、逆に、舞台に穴を開けてまで母親の元へ駆けつけようものなら、多分、母親はワタクシのことを厳しく叱りつけたことでしょう。
さて、ワタクシは母親の死に目に会えたのかどうかと申しますと、実は会えておりません。入院中の母親が危ない状態になりワタクシは病院に泊まり込みを始めたのですが、その「いつ死んでもおかしくない」という状態が一ヶ月ほど続いたのでございます。病院を離れるのは最小限にしていたのですが、どうしてもお店に戻らなければならない用事がありまして、3時間ほどお店に戻っておりました。そして、お店から病院に戻る途中で、「今しがた亡くなった」との連絡が病院から・・・出来る限り母親に付き添っておりましたが、わざわざワタクシが離れたスキを狙って逝ってしまったような感じでございました。どうしてでしょうねぇ? 照れくさかったのかな?