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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2010-02-24 技術が勝つか、表現が勝つか?

フィギュアスケートのショートプログラム(SP)が終わりましたねぇ。今の時点で、韓国の「キム・ヨナ」が堂々の1位。チョット差を付けられて日本の「浅田真央」が2位につけております。この2人、表現の仕方が全くの好対照で、ちょっと面白く思えましたので、ワタクシの感じた範囲でこの2人を語っちゃうのでございます。あしからず。

フィギュアスケートというのは、スポーツでありながら芸術的な要素も十分加味されるという、演じる側からすると実に厄介なスポーツだと思うのでございます。ここで、スポーツとダンスとの区別を、体の骨格を使って説明いたしやしょう。両肩と左右の腰骨を結ぶ「四角形」を想像してくんなまし。この四角形を出来るだけ崩さずに動こうとするのが、「スポーツ」でございます。この四角形を維持したまま、手足でバランスをとるわけでございます。

一方、「ダンス」というものは、この四角形をあえて崩すように動く事が多いのでございます。肩と腰骨を近づけるような動きですとか(イメージできますでしょうか)、あるいは風をはらんだ帆のように胸を張ったり猫背になったりといった動きとか。ダンスは肩や腰が何かに引かれるように動き始めて、後から手足が付いてくる感覚がございます。肩や腰で踊るわけでございますね。ダンスというのはそういった「クネクネ」とした要素が含まれまして、一方、「スポーツ」的な動きというものが体全体でバランスを取りながら動くのとは対照的なのでございます。

浅田真央さんの滑り方は、かなり「スポーツ」寄りの、キチッとした演じ方でございます。手先も理想的なポジションにはめ込んで固めている感がございます。一方、キム・ヨナさんの滑り方は、かなり「ダンス」を意識しております。先ほどの四角形を崩すようなポーズを随所で使っておりますし、手先にも、ちょっとルーズさを残しております。その結果、浅田真央さんには、「段取りを正確にトレースしている」という印象がございます。逆にキム・ヨナさんは、「何を観客に伝えるか」というのを、本人がはっきり持っております。そのはっきりとした目的を、スケートという手段で表現している「表現者」なのです。技術云々以前に、キム・ヨナさんには「スター性」が有るのでございましょう。

さて、次に、呼吸のお話をいたしましょう。スポーツの呼吸というのは、常に動きと連動しております。けれど、芸術的な呼吸というのは音楽と連動しております。フィギュアスケートのような芸術性が加味されるスポーツというのは、この呼吸面でのジレンマに必ず突き当たるのでございます。浅田真央さんの呼吸は、やはり動き優先の呼吸でございます。大事なジャンプをする直前など、ジャンプのタイミングに呼吸を合わせようとしております。ではキム・ヨナさんの呼吸はどうか。実に、音楽優先の呼吸をしております。ですから、音楽に動きがピッタリ合う。このシンクロの見事さは、息づかいまで気づかっていなければ絶対に不可能でございます。と同時に、先ほどの「ジレンマ」がございますので、呼吸に関してはかなりの苦しさを我慢しながら演じているはずでございます。

そして、この呼吸に関する事ですが、浅田真央さんは呼吸を合わせようとするときに、「素に戻ってしまう」のでございますね。素に戻るというのは、分かりやすく言うと「演技を忘れる」といったところでしょうか。これが、キム・ヨナさんには全く無い。キム・ヨナさんは、最初から最後まで、常に「演じること」に集中しているのでございます。高度なジャンプを優先した浅田真央さんの演じ方と、あえて難易度の高いジャンプを避け、表現することを優先したキム・ヨナさんの演じ方と、実に好対照になっているのでございます。

26日にもこの2人の決着が付くようでございますが、どうなるのでございましょうか。確かに「表現」という観点ではキム・ヨナさんに一日の長がございます。けど、ショートプログラムであれだけのものを見せておいて、いったい「フリー」でまだ見せるものが残っているのかなんて、ワタクシなどは思っちゃいます。“表現“が勝つのか、“技術”が勝つのか...みなさま方もオリンピック中継を見る際には、こんなことも気にしながら見てくださいませ。ではでは、ワタクシ名古屋薫がチョット偉そうに、世界の浅田真央とキム・ヨナに対して、講釈たれてみましたとさ。


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