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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2021-08-08 【ARIGATO、そして、お疲れさまでした】

「分かる人だけに伝わるメッセージ」、というのがワタクシのオリンピック閉会式の感想でございます。まぁ、いろいろ酷評されることになるでしょうね。やっつけ感がありますからね。ただ、予算をかけられない,時間をかけられない、密はダメ、世間の逆風、直前の退任、など多くの制約の中で、関係者の方々は頑張られたと思いますよ。

開会式でも言われましたが、やはり、式を首尾一貫する「テーマ」が希薄ですよね。いろいろ詰め込むのはよろしいのですが、それを首尾一貫したテーマに少しずつ「絡める」ということが出来ると、詰め込みでも統一感が出てきたはずでございます。もしかしたら、複数の演出家で分担したのかもしれませんよね。演出家に関しては、ゴタゴタが有りましたからねぇ。

まず気づいたのは、NHKのアナウンサーの説明が非常に少ないこと。出演者の名前くらいしか言わないので、「どんな人なのか」ということがサッパリ分からないシーンが多かったのでございます。これが、冒頭で申しました「分かる人だけに伝わる」ということになっちゃうのでございます。直前まで変更が入って、NHKが詳細な原稿を作ることが出来なかったのかな、なんて邪推もしちゃいますね。

で、その「分かる人だけ」という部分ですが、まず、国歌斉唱の「宝塚歌劇団」の面々と、オリンピック賛歌を熱唱した「岡本知高(ともたか)」さん。岡本知高さんってのは馴染みが無いかも知れませんが、この人は男性が裏声を使って女声(ソプラノ)で歌うという唱法の第一人者。つまり宝塚とは真逆のポジション。この正反対のそれぞれの第一人者を、「多様性」として起用したのだと思われます。

ただねぇ、日本でこそ有名な宝塚ですが、外国人には「誰? この人」ですよね。そして岡本知高さん。声だけ聞いていたら女性と思ってしまう人が大勢いるはず。これも、説明しないとわからない。演出家の意図は十分に分かりますよ。でもね、これは、世界中の人が理解出来るような説明を入れるべきでございましたね。

入場行進は、古関裕而のオリンピックマーチ。開会式はゲーム音楽。まぁ、国立競技場に古関裕而が流れるのは嬉しいですけどね。これも邪推ですが、予算が厳しくなって、まず一番最初に削られたのが「オリジナル曲」だったということでしょうか? そこで気になるのが、開会式でも閉会式でも、入場行進の曲がテレビの音声の中では控え目なこと。NHKの忖度なのでしょうか?(でも、後述の東京音頭は盛大、笑)

中間部分は、スカパラダイスオーケストラのコンサートになってしまいましたね。つうか、スカパラを選手の入場行進に使って欲しかったなぁ。今大会では大きなセットを組めない事情があったのか、様々な細かい芸が繰り出されるのですが、どうも上野公園の大道芸を見物している感が否めない。どうせ無観客だからと「大技」はバッサリ切り捨てて、小技勝負に出たか?

その後、閉会式は「フランス色」を出してまいります。が、しかし、なぜに「愛の賛歌」なの? しかも、(ファンの方にはほんとに申しわけございませんが)milet(ミレイ)」さんの歌う「愛の賛歌」が、聞くに堪えない。声は綺麗ですが、この歌を歌いきるには「若すぎる」のですよ。日本人は騙せても、本場フランスの人はこの歌をどう聞いたでしょう? ワタクシ、閉会式の中継を見ながら、赤面したのでございます。

岩谷時子さんが付けた日本語の歌詞(越路吹雪で有名)は、どこまでも甘ったるい歌詞。しかし、原曲のフランス語の歌詞は「アンタのためなら、国も親友も捨てる、アンタが死んだら後を追って自殺する」というシャレにならない歌詞。miletさん、フランス語でも歌っていたけど、歌詞を理解してたのかなぁ? シャンソンから選ぶのなら、他にもっと賑やかな曲があるのにね。フランスへのメッセージだとすると、この選曲は有り得ない。

で、スカパラ部分の最後を飾るのが、ベートーベンの「歓喜の歌」。おい、なぜここで、ドイツが来る? せめて、フランスの曲で締めるべきだろ! 百歩譲ってチャイコフスキーの「1812」がギリ。日本でこそ、歓喜の歌、つまりベートーベンの第九は年末に演奏されますが、海外では、ベートーベンの第九に終末感は全くない。全く意味不明の選曲でございます。愛の賛歌にしろ、歓喜の歌にしろ、日本だけをターゲットにした視野の狭い選曲。演出家が日本国内にしか目を向けてない感じでございます。

さぁ、唯一の見所が、「アオイヤマダ」さんのダンス。もう少しシンプルな衣装でも良かったのにとは思いましたが、やはり圧巻! 開会式の「森山未來」さんのダンスと並んで、記憶に残るシーンでございます。このダンスのテーマは「追悼」。本来ならこの後の「盆踊り」へとテーマが受け継がれていくのですが、盆踊りが死者への供養だという説明がほとんど無いために、このテーマ繋がりに気づく人は少ないでしょう。あ~あ、もったいない、もったいない。

次回開催国のフランス制作の映像が流れるのですが、フランス空軍のアクロバットチームの映像が、そりゃぁ迫力があって綺麗でございました。堂々とお金をかけてプロモーションをしてもらえるフランス空軍が、羨ましいのでございます。日本のブルーインパルスも頑張ってましたが、いかんせん、日本の場合は自衛隊への逆風が強すぎて、何もかもが「控え目」になってしまう。日本のブルーインパルスが不憫に思えたシーンでございましたね。

スカイツリーがトリコロールカラーになり、「大竹しのぶ」が宮沢賢治の「星めぐりの歌」を歌う。この曲の歌詞は、「星座」がテーマ。しかし、日本人以外には、それは分からないでしょうねぇ。その次にかかる曲は、フランス人作曲家ドビュッシーの「月の光」を日本の(いや世界の)シンセサイザー第一人者「冨田勲」が編曲した曲。「日本とフランスの掛け渡し」ということでの選曲なのでしょうが、やはり説明不足なので、「分かる人だけに分かる演出」になってしまっております。

宮沢賢治・星座・月、と来たら、「銀河鉄道999」を出しても良かったですよね。日本から出発した999が、星々の中を巡り、月の横で聖火が消えるのを眺め、パリに到着する、なんて演出も出来たはず。実は、日本のマンガ・アニメ、フランスでは大人気でございます。もし閉会式の後半をマンガ・アニメで埋め尽くしていたら、フランス人、狂喜乱舞だったでしょうねぇ。

長くなったので、そろそろ締めくくりますね。もっと明示的な説明や演出を入れたら、この閉会式はもっと奥深いものとして受け取られたでしょうねぇ。それが出来なかったのは、やはり、限られた予算、限られた人員、コロナ禍での様々な事情などもあったのかも。多分、この閉会式は酷評されることでしょう。それでも、ワタクシは、ここまでにこぎ着けた関係者の方々を称賛いたします。ARIGATO、そして、お疲れさまでした。


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