店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです
ワタクシの心の友、「松屋」。先日の朝も、いそいそと松屋へお出かけでございます。店内に入ると、券売機の前に先客がいらっしゃる。高齢の男性の方。券売機を操作しているのですが、商品を選択した後の画面からどうにも先に進めず、困っている様子でございました。
ワタクシ、「お手伝いしましょうか?」と声をかける。横に並んで操作を教えておりまして、その老人が困り果てていた原因が分かったのでございます。その老人、券売機の画面の「あるマーク」が気になり、恐くて先に進めなかったのですよね。その「あるマーク」とは、これでございます。
商品を選択いたしますと、「選択リスト」という項目にその商品が追加されてまいります。ただ、商品名の頭に、某トナカイを思い出させるような、これまた毒々しい「バッテン」のマークが! ご老人、そのバッテンを見て、何か操作を間違えたのか? 選んではいけない商品なのか? 俺、何か叱られてる? とかまぁ、疑心暗鬼に陥って先に進めなかった様でございます。罪なバッテンでございますねぇ。
松屋の券売機の画面デザインには、時々、「?」と思うことが少なくございません。では、このバッテンのデザインは、何がいけなかったのか? それは、このバッテンのボタンが、「現在ボタン」なのか「未来ボタン」なのかの区別が付かないからでございます。現在? 未来? 何それ? とお思いでしょう。では、ご説明いたしやしょう。
お家の壁の電気のスイッチ、小さなランプが付いているスイッチもございますよね。あの小さなランプ、実は、二種類有るのでございます。そして、その二種類、全く反対の動作をいたします。普通、よく見るのは、こんなオレンジや緑色のランプではないでしょうか。
これはよく、「ホタルスイッチ」なんて呼ばれております。暗闇でホタルの様に光って、「スイッチはここですよ~」と教えてくれるのですね。スイッチがオフの時にホタルの様にうっすらと光り、ONの時は消えております。「これを押すと、電気が点くよ」という未来を教えてくれるボタンなので、これを「未来ボタン」と呼ぶ事にいたしましょう。
このランプは「パイロットランプ」と言いまして、先ほどとは逆に、オンの時に点灯し、オフの時は消えている。つまり、「今、換気扇が回ってますよ~」と現在の状態を教えてくれるランプでございます。ですからこれを、「現在ボタン」と呼ぶ事にいたしましょう。似たような壁のスイッチにも、未来ボタンと現在ボタンの二種類が存在していること、お分かりいただけましたでしょうか。
余談ですが、このホタル(未来)とパイロット(現在)という真逆の動作、色が全く統一されていないのが困りもの。例えば、テレビの電源ランプは、待機時に「赤」でオンにすると「緑」に変わる物が多いですよね。先ほどの例とは真逆でございます。これも、海外のメーカーで待機時が緑の物が有ったりするので、ややこしさに拍車がかかっております。
では、お話を松屋のバッテンに戻しましょうか。あのバッテンは、「これを押すと、取り消すことが出来ますよ(未来)」という意味なのか、「これ、注文、通ってません(現在)」という意味なのかが曖昧なのでございます。パソコンに慣れた人なら、バッテンが「取り消し」や「閉じる」を意味することはすぐ分かる。けど、デザインというものは、「利用者が○○を知っているはずだ」という前提で設計してはいけないのでございます。
では、あのバッテン、どうするべきだったのか? まぁ、バッテンなんか使わずに、単純に「取り消す」という文字にすればよろしかったのでしょうね。そもそも、バッテンとマルの意味、国によって逆転する場合がございます。ゲーム機「プレイステーション」が、コントローラーのマルとバツの配置を変えたのも、そんな理由が有ってこそでございます。