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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2021-02-16 【パルピテーション】

ときめき・ときめく・ときめかす

喜びや期待のために胸がドキドキする(こと)。(広辞苑より)

palpitation(パルピテーション)

[医]動悸、震え。(ジーニアス英和辞典より)


日本語の「ときめき」をそのままズバリ表現する英単語は無い! というのが通説でございます。ところがですねぇ、『花子とアン』の再放送を見ていて、「palpitation(パルピテーション)」という英単語を「ときめき」と訳すセリフに出会ったのでございます。『花子とアン』は3回目の視聴。3回目にして初めて、この部分に引っかかったのですよね。

主人公の初恋のドキドキを、palpitationという単語と絡めるストーリー。「あんのゆりかこ 村岡花子の生涯」という原作を読んでいないので、原作に存在したエピソードなのか、それとも脚本家の中園ミホさんの脚色なのかは分かりません。初めて出会った単語の、その意味が分かって感動する。その流れが、初めての恋との出会い、そして人を好きになることの意味が分かる感動とオーバーラップする、そんな一節でございます。

さて、ワタクシが引っかかったのは、実は別の書物。こんまりこと近藤麻理恵さん著の『人生がときめく片づけの魔法』でございます。この本が大ヒットしたのには、「片づけの心髄は『ときめき』にある」と説いたからでございます。ただ、この本が英訳されたとき、ときめきという語は全く別の英語に訳されていたのですよね。それが、これ。

Spark Joy

「きらめくワクワク」とでも訳しますか? この単語を選んだのは大正解でしたね。近藤麻理恵さんは、著書もご本人も全米で大ヒット! 『TIME』誌の「最も影響力の有る100人」にも選ばれております。ここで気になったのは、アンとこんまりの前後関係。「ときめき」という語の訳では、お互いに影響とか有り得たのでしょうか?

『人生がときめく片づけの魔法』が出版されたのが、2010年の暮れ。2011年には日本中で話題になり、世界中に翻訳出版されております。2014年に結婚。同年、ご夫婦でアメリカに移住された後は、アメリカで冠番組を持つほどの大人気。一方、「花子とアン」の放送年も2014年。中園ミホさんが執筆中にこの本に出会っている可能性は高い。とはいえ、時期が重なるのは、どうも偶然っぽいですなぁ。

初恋の奥深さに初めて触れる、というシチュエーションなら、小難しい医学用語が謎めいている。片づけの奥義を分かりやすく伝えるなら、慣れ親しんだ単語が一目瞭然。そして、その慣れ親しんだ単語を選んだゆえに、近藤麻理恵さんの著書は、英語圏で日本とは違った捉えられ方をするのでございます。

『人生がときめく片づけの魔法』という本は、英語圏では「宗教本」「スピリチュアル本」の棚に置かれております。そもそも「Joy(喜び)」という単語は、少なからず宗教的な空気を漂わせております。そして同書では、「捨てる物に感謝する」という項目もございます。「感謝」という語、これもキリスト教では宗教に回帰する単語でございます。

「物にJoyを感じる」「物に感謝する」という感覚、これが斬新かつ宗教的で、特にキリスト教圏で大ヒットしたのでしょうねぇ。キリスト教では、感謝と言えば「神への感謝」ということになる。アメリカ人独特の「浪費=裕福」という価値観も、「浪費出来ることを神に感謝する」となってしまう(笑)。だから「物に感謝しろ」と言われたとき「Oh, my, God!(なんてこどだ!)」となったのでしょうねぇ

「ときめき」という語の意味を考えるに、何とも神秘的な言葉だなぁと思えてしまいます。こんまりさんの本は、palpitationなんて語を使っていたら、多分、大ヒットしなかったでしょうねぇ。間違って、医学書の棚に置かれていたかもしれません。ということで、ドラマの一節から、「ときめき」という語の散策を行ったというお話でございました。(美輪明宏風に)「パルピテ~ショ~ン」


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