«前の日記(2020-05-28) 最新 次の日記(2020-05-30)» 編集

薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

2008|05|06|07|08|09|10|11|12|
2009|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2010|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2011|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2012|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2013|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2014|01|02|03|04|05|06|07|08|10|12|
2015|01|03|12|
2016|01|02|03|05|06|07|08|09|10|11|12|
2017|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2018|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2019|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2020|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2021|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2022|01|

2020-05-29 【なまじっか】

コロナ対応に関して、「どうして韓国の様に出来ない?」「どうしてアメリカのように出来ない?」なんて言う人もございます。法律も違うし、国民の考え方も違うし、事はそう単純ではないのですよね。でも逆に、「どうして韓国やアメリカはその様に出来るのか?」を学ぶことは有意義でございます。コロナ関連の給付金に関して、アメリカの例をご紹介いたしましょう。

日本では手続きに手間取り、未だに受付さえ開始していない地域もございます。一方アメリカでは、国民は何も手続きなし。放置しているだけで、各国民の口座に「自動的に」給付金が振り込まれております。一律に支給な日本に対しアメリカでは収入制限を付けておりますが、その振り分け作業もほぼ自動で処理されております。

アメリカでは確定申告が全員に義務化されており、徴収や還付金も銀行口座からの引き落とし・振込で行われるシステムになっております。ですから、税務署は国民全員の収入と銀行口座を把握しております。この二つが分かってますから、後はコンピュータの自動処理で全て完了でございます。

では、本題に入りましょう。昨日は、マイナンバーカードを受け取りに行ったお話でございました。そして、マイナンバーと日本の戸籍制度との「闇」を、本日お話しするということでした。その前に、戸籍という大量のデータを集計する方法を、「手作業」と電算的「データベース」、この二つの違いを説明いたしましょう。

大量の戸籍データが全て、もし1冊の台帳にバラバラの順番で並んでいたら? これは集計や検索の度に大変ですよ。毎回、台帳の先頭から調べ尽くさなければならない。ですから、その台帳は区・町・村という単位で別々に保管し管理した方が効率が良い。明治期に確立した日本の戸籍制度は、こうやって末端の役場に分散して保存されていったのでございます。

一方、コンピュータのデータベースでは、全てのデータがバラバラに並んでいても大丈夫。個別のデータに登録されている「住所」「年金」「収入」等の項目で、瞬時に検索・抽出・並び替えが出来るからでございます。最初から県別に分けておく必要もない。ひとつの巨大データベースにしておけば、コンピュータの検索機能でいくらでも後から分類・抽出できるのでございます。

さて、話を日本の戸籍制度に戻しますよ。役所ごとに保管という仕組みのせいで、長らく、戸籍謄本の写しをもらうためには、その戸籍が保存されている役所まで出向く、あるいは郵送してもらう、そんな必要がございました。明治から平成20年位までの長きに渡り、そんなアナログだったのでございます。戸籍のデータ化が進んだ現在では、コンビニで取得できるのは周知の通り。

バラバラに保管している戸籍ですので、結婚とか引っ越しとか有りますと、出て行く役所の戸籍をバッテンで消し(バツイチの語源)、新しい役所の台帳に書き写すという作業を行うわけでございます。この超アナログな作業を、明治期から平成中期まで、延々と繰り返されてきたのでございます。

で、ここで察しの良い方ならお気付きかも。昨日の書き込みで、「マイナンバーカードは婚姻や引っ越しで無効になる」ということがございました。おやおや~? 近代的なシステムのはずのマイナンバーカードが、超アナログ手作業の戸籍制度と似たような仕様になっているのは、なぜだろうねぇ~?

ここからはワタクシの推測でございます。明治期からの戸籍制度のデータ構造は、さほど変わってないのでしょうね。手書きの謄本が文字データになったという変化はございますが、各役所の台帳ごとに分散して保存というのは、旧態依然、変わってないのでしょう。そして、マイナンバーというのは、「どの役所の台帳の何ページ目に保存されているか」というのを指し示しているだけなのでしょう。

指し示しているだけですから、台帳のそのページがなくなってしまうと見失ってしまう。婚姻や引っ越しでマイナンバーカードも更新する必要が有るというのは、そもそも、役所内の事務処理全般でマイナンバーを基本軸に更新作業が行われていないのでしょう。戸籍台帳が全ての事務作業の基本であり、マイナンバーは「肩書き」「検索しやすくする付箋」くらいのポジションだということ。

え~と、長くなってきたのでそろそろまとめますね。そもそも戸籍制度の存在しなかった諸外国では、社会保障番号とか保険番号とか、たまたま他の目的で使っていた番号を戸籍の管理に流用したという経緯がございます。最初から番号で管理していたので、コンピュータの台頭により進められたデータ化と、非常に相性が良かったのでございます。

日本では、なまじっか手書きの戸籍制度が明治期から存在していたために、後から通し番号を導入というのがより複雑になってしまった。日々の更新作業を進めながら戸籍データを根本的に作り直すなんて作業、計算したら天文学的なコストと時間が判明したのでしょうね。それで、既存の戸籍制度に数字を「張り付ける」という作業でお茶を濁した。そんなところではないでしょうか。

150年前のシステムを使い続けながら、現代のIT社会に適合させる。そのギャップは誰が埋めているか? それは、役所の職員さんの献身的な手作業でしょうね。アベノマスクや給付金が遅れているのも、間に手作業が介在しているから。

「韓国の様に」「アメリカの様に」と批判するのは簡単ですよ。でもそれは、日本の戸籍制度とマイナンバーとのこんな複雑な事情も合わせて語られないと、あまりにも役所の職員さん達が理不尽でございます。今後、日本の対応の遅さが取りざたされることになると思いますが、こんな切り口でも見てもらいたいなと思う次第でございます。では、では。


«前の日記(2020-05-28) 最新 次の日記(2020-05-30)» 編集