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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2019-12-18 【与えよ、さらば与えられん】

ちょと前に、富士山頂で生配信中に滑落した人の事件が有りましたでしょ。今夜の『クローズアップ現代+』はその「自撮り事故」がテーマでございました。

滑落で亡くなられた方は、「TEDZU(テツ)」という名前で生配信をしておりました。リスナーは1人ないし2人。「配信」というよりは、その数人のリスナーを相手に語り合っているような放送だったそうでございます。同様の極端にリスナーが少ない「過疎放送」が、無数に存在しているそうでございます。

そんな過疎放送を続ける人の多くは、その理由を「自己承認欲求」だと主張するそうです。「ここに自分が存在することを知って欲しい、見て欲しい、聞いて欲しい」、そんな衝動から数人のリスナー相手に発信を続けているとのこと。

これね、ワタクシが以前から申し上げている、ギブアンドテイクの「テイク(Take)」の感情ですよね。芸術でも商売でも、この「テイク=欲しい」という動機から発する物は、いたって非生産的なのでございます。ただ、この「テイク」の感情から「ギブ(Give)=与える」の感情に昇華していくには、大きな壁がございます。

なぜなら、「テイク=欲しい」という感情は生まれた直後から発生している先天的なもの。一方、「ギブ=与える」というのは人間が成長過程で会得する後天的なものだからでございます。

そしてさらにややこしいのは、日常的に行われている「対価を払う」という行いは「ギブ」ではない。それは「交換」でございます。しかしこれを「ギブ」と思い込んでいると、「真のギブ」からは永遠に遠ざかってしまうのでございます。ワタクシが言う「ギブ」は、見返りを求めないのでございます。

ワタクシは若い頃から、音楽や演劇というものに携わっておりました。プロを目指して練習・稽古する上では、常に自分の動機(モチーフ)が「テイク」なのか「ギブ」なのかは大きな戒めでございました。結果を気にすれば、ついつい心が「テイク」に振れてしまう。すると、何も伝わらなくなることに気がつく。芸術というのは、克己(こっき)なのでございます。

もちろん、世の中に大量生産される芸術作品の中には、一見「テイク」主導と思われる物もございますよ。でも、その作品の中の人(携わっている人達)は、必ず「ギブ」の精神でクリエイトしているはずでございます。なぜなら、それでなければ、人の心を打たないからでございます。

ワタクシも、読者に文章を配信している者として、配信者のカタワレでございます。そして、自分の動機が「ギブ」で有り続けるために、あることを厳しく守っております。それは、「読者数・アクセス数を見ない」ということ。これを気にし出すと、途端に感情が「テイク」の方へ大きく振れ始めてしまうのでございます。

さて、自撮り事故で亡くなられたテツさんは、サービス精神が旺盛だった様子。人に物を貸してあげたり、差し入れをしたりとか。そして、リスナーの「富士山の雪景色が見たい」という言葉に促されて、雪の富士山に軽装で登ってしまったのでございます。この方のサービス精神が「テイク」だったのか「ギブ」だったのかは、今や知る由(よし)はございません。


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