店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです
最近、ネットでちょっと話題になっているのが、「Elmon(エルモン)」さんという女性シンガーの方。もっぱら YouTube でしか登場せず、しかも口元はいつもマイクで隠れていて、つぶらな瞳と綺麗なストレートヘアーがチャームポイントという謎の女性。素朴な声で、素朴な歌い方をするシンガーでございます。
ワタクシ、歌の上手下手ってのは、声質でほぼ8~9割決まってしまうのではないかと思っております。Elmon さんの声は実に純朴で、ある意味「子供っぽい声」とも言えるのですが、その声にはそこはかとない「懐かしさ」を感じるのですよね。自分の若い頃に引き戻されるような、そんな魔力さえ感じる声でございます。
声が純朴ならば、歌い方もストレートで飾り気なし。歌をこねくり回さない素直な歌い方でございます。「上手に歌おう」と思うほどに、その歌い方には「あざとさ」が呈して来るものでございます。あざとさを微塵も感じさせないその歌には、Elmon さんの素直な心根と「若さ」を感じるのでございます。まさに「声質の勝利」と言えることでしょう。
【千と千尋の神隠し】『いのちの名前』
https://youtu.be/rvLG2hIkO-I
こういった純朴な歌を聴いていると、若い頃にタイムスリップしたような気分にさせられるのでございます。と同時に、自分が既に失ってしまった物を懐古するような、懐かしさとジェラシーの混ざった感覚もフツフツと沸き起こってまいります。そして、胸を絞られるような切なさに襲われる。老いて汚れた身には、純粋すぎる物というのは眩(まぶ)しすぎるのでございます。
先ほど、上手に歌おうと思うほどに「あざとさ」が呈すると申しました。歌で人を感動させようとする作業は、この「あざとさ=自己主張=色(しき)」とそれをそぎ落とすこと「=空(くう)」とのせめぎ合いでございます。
「あざとさ」を見れば、それを許容している「空」の存在を感じる。「空」を見れば、その背後には蹴落とされた無数の「あざとさ」を感じる。色と空、表裏一体なのですよね。そう、「色即是空(しきそくぜくう)」というわけでございます。その間(はざま)で、もがき苦しむところに芸術が存在いたします。