店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです
お店の店主を20年近くやっております。これまでに入店そして退店と当店を通り過ぎて行ったニューハーフ、女装子、男の娘は、何十人かあるいは100人以上になるのではないでしょうか。こういったお仕事ですから、中には特異な過去を経験してきた人や事情を抱えている人も時々ございました。
経験や境遇ってのは顔つきに表れるわけでございまして、野生動物の様なギリギリした目の新人さんが入って来ますと、「あぁ、いろいろ騙されてきて『ここでは騙されないぞ』と気を張っているのかなあ」と思ったりいたします。
また、口角も目も眉も垂れ下がった、実になさけないお顔の人だったりすると、「いろいろうまく行かなくて、完全に自信を無くしちゃってるのかな」なんて想像いたします。多分、自分で気がつかずにそういう顔にしてしまっているので、なおさら物事がうまく運ばなくなっているのでしょう。
人気商売ってのは、「売れ筋の顔」ってのがございます。しかしですね、内面にいろいろ抱えている人達のお化粧ってのは、その心情を反映するようなメイクをわざわざしちゃうわけでございます。多分、そうした方が落ちつくのでしょうね。でも、それでは売れ悩むことになる。メイクの仕方など、売れ筋の顔に誘導したりいたします。
と同時に、とにかく「笑うこと」を指導したりいたします。微笑みですよね。「笑顔は最大のお化粧」と言い聞かせたりもいたします。しかし、この微笑みの指導が、意外と苦戦することが多い。顔が固まっているのでございます。表情をあまり変えない生活が長く続き、顔の表情筋が偏って発達しているのかもしれません。
新人さんが「売れ筋」から外れている場合は、メイク、立ち居振る舞い、声など、こうやって根気よく指導・誘導するわけでございます。勘の良い子なら数ヶ月で見違えるほど変わって、あか抜けて来る。すると写真写りも良くなり、お客様に選ばれることも増えてくる。リピーターも増えてくる。売れ筋に乗ったわけでございます。
しかし、中には、半年とか1年とか迷走してしまう人もいる。そして、自分の不器用さに心が折れて、諦めてしまったりもする。人気商売、接客商売ってのは、持ち前の「センス」に因るところが大きいのでございます。もちろん、無いセンスを努力で補って成功なんて事例もあるわけなので、管理者としては油断出来ない。
ギラギラした目が丸く柔らかくなってきたり、自信なさげにしていた人がキリリとした眉毛を引き始めたりすると、少し安心するものでございます。ただ、レベルアップしてもそれがすぐに結果として表れないのが、このお仕事の辛いところ。お客様の来店間隔が数週間~数ヶ月と長いからでございます。