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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2019-04-09 【急がせる判子には要注意】

昨年の10月に、台湾で列車事故がございました。その車両の製造元が、日本車両製造という会社。その日本車両製造に、台湾側が賠償を請求してきたのでございます。ほんと、日本の企業は「賠償」という語に弱い。うっかり、お人好しな対応をしないか、心配なのでございます。

この事故に関して、新聞社系のサイトを中心に、いろいろ調べてみたのでございます。まぁ、ワタクシ、鉄道の技術的な事に関してはにわか知識ですので、トンチンカンな事を話していたりしたらごめんなさい。ということで、始めましょうか。

まずね、この事故、日本の福知山線の事故とそっくり。違いは、福知山線はATSという自動で止める装置が設置されていなかったのに対し、台湾の事故は運転手が同等のスイッチを切っていたことが最大の原因。遅れを回復しようとして、急カーブに最大速度で突っ込んだのでございます。

ここでね、鉄道のブレーキのお話を、ほんと手短にいたしますね。

鉄道のブレーキは3種類ございます。発電ブレーキ、回生ブレーキ、機械ブレーキでございます。その内、発電ブレーキ・回生ブレーキは、モーターを発電機として使うことで制動する方法。電気ブレーキは、モーターを抵抗器(巨大な電熱線の様な物)に繋ぐことで制動いたします。一方、回生ブレーキは、モーターでの発電を架線に戻すことで制動力が出るのでございます。

電気ブレーキは、列車内で完結した動作ですので、いつでも使えます。ところが、回生ブレーキは、架線に戻した電力を他の列車が使ってくれないとノーブレーキ状態になってしまう。大都市の様なウジャウジャ電車が走っている地域でないと効果が現れないブレーキでございます(これ重要)。

もひとつ、機械ブレーキは、機械的に車輪を締め付けて制動させるもの。たいてい、空気圧を利用いたします。このブレーキ、何度も使ってタンク内の圧縮空気が無くなるとノーブレーキ状態となってしまう。だから、その危険がある時には列車を動かせない様な安全装置が必ず付いているのでございます。

(あぁ、ブレーキの説明でこんなに字数使っちゃったよ)

さぁ本題。事故の主たる原因は、運転手がATP(列車自動制御保護システム)を切っていたためでございます。じゃぁ、なぜ切ったのか。それは日常的に誤動作が多く、運行に支障をきたしていたため。そこで気になるのは、この列車が事故直前の36分間に、9回も動力系統に異常が発生していたことでございます。

ここに、もうひとつの要素がございます。列車は日本製ですが、ATPという制御システムはイギリス製とのこと。秒単位でギッチギチに走らせる日本と、遅延上等ノンビリ運行のイギリス。鉄道事情の違いすぎる二国の複合システムってのが、怪しいって言えば怪しいのでございます。

そして、先ほどのブレーキのお話。回生ブレーキは近くに他の列車が無いと効かない。その場合、列車は自動的に機械ブレーキに切り替える。それを何度も繰り返していると、圧縮空気が無くなり、安全装置が働いて列車が動かなくなる。そんな不具合が日常的に起きていたのではないかなぁと、にわかが想像するのでございます。

ここまでの「妄想」をまとめまましょう。本来、回生ブレーキが有効に働く路線ではないところに、日本が都市部でガンガン使っている様な仕様の列車を導入してしまった。回生ブレーキの効果が薄く、頻繁に安全装置が働いて止まってしまう。その遅延を回復するために、ATPを普段からオフにすることが多かった。そして、事故。

そして、日本の企業が訴えられた根本は、そのATPの状態を司令室に送信する機能がそもそも配線されてなく、最初から機能していなかったことでございます。仕様書には配線が有るけど、実際の車両では配線されずに納車されてしまった。日本車両製造、それに関してよく調べもせず、あっさり「ミス」と認めてしまったのでございます。あぁ、何というお人好しであることか。

台湾のATP事情に関しては、2006年に全車両にATP搭載。しかし、故障・誤作動が多く、運転士が勝手にオフにすること頻繁。その結果、2007年に大事故。それを受け、2010年に、ATPの状態を司令室で監視する装置を導入するも、はやり誤作動が多く、現場からは不満の声。その後、2012年に日本車両製造から納車された今回の事故車には、その遠隔監視する機能の配線が最初から無かったということでございます。

そもそも、ATPがまともに動作してないのに、それを「オフる」ことで対処していたって事に、最大の問題点が有るのでございます。で、この列車の配線の件ですが、ワタクシの妄想といたしましては、日本車両製造が現場の声を受けて「忖度」しちゃったのではないかなぁと思う次第でございます。

「配線を忘れた」のではなく、クライアントからの要求で「わざと外した」という可能性も。入札の際、台湾側からそんな圧力が秘密裏に掛けられていたのかも知れないということでございます。秘密裏だから、設計者のあずかり知らぬところで配線が変えられる。後から調べたら、「ミス」としか見えない。あぁ、恐ろしや、恐ろしや。

で、冒頭でも申し上げましたが、よ~く調べもせずあっさり「ミス」と認めてしまうのは、何とも軽率。いや、たとえミスだったとしても、それが決定的な事故原因ではないので、補償とかを突きつけられる筋合いでは無い。なぜなら、その列車に遠隔監視機能が無いことは、事故前から関係者全員が知っていたはずだからでございます。

ワタクシ、台湾側が慌てて補償を突きつけてきたのが、実に怪しいと思っております。どんな契約であっても、急いで判子を押させようとする契約は、総じて、相手側に何かしら後ろめたい事が有ったりするもの。台湾側、何かに気付き、それが発覚する前に慌ててこの事故を終結させたいのでは? なんて妄想も抱いちゃう訳でございます。

とにもかくにも、日本車両製造(本社、名古屋市)には、毅然とした態度を取ってもらいたいものでございます。事故の原因は、運転手がATPを切ったから。車両には問題が無かったのでございます。「ミス」というのも撤回すべき。仕様書と納品が違ってるなんて日常茶飯事でございます。あ~ぁ、大丈夫かなぁ。日本車両製造、頑張れ!


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