店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです
「高倉健のケンに、菅原文太のタ」、ドラマ『傷だらけの天使』で、主役の木暮修が自分の息子の名前を説明する時のセリフでございます。このセリフのせいで、その後「ケンタ」という名前を聞く度に、ショーケンこと萩原健一さん演じる木暮修のこのセリフが、いつも脳裏に浮かんでくるものでございました。
ワタクシがこのドラマを見ていたのは、中学1年の頃かなぁ。ワタクシの価値観や人生観にかなりの影響力を与えたドラマでございました。その第6話「草原に黒い十字架を」という話が、かなりショッキングな内容。多分、そのラストシーンは現在では放送出来ないレベル。その回がトラウマになっておりまして、挿入曲のクラシックの名曲「マドンナの宝石」も、何かしら素直な気持ちでは聴けないのでございます。
この「傷だらけの天使」のドラマで描かれていたのは、「理不尽」や「不条理」、そして人間の「業(ごう)」だったりいたします。世の中や人の心の暗黒面を、ギリギリとほじくり返していく様なドラマでございました。まぁ、それを中学1年で見ちゃったのですから、そりゃぁ影響されるでしょうねぇ。
昭和の時代には、こんな理不尽でバッドエンドなドラマが多かった様な気がいたします。けれど、いつの頃からでしょうねぇ、ドラマは常にハッピーエンドしか許されなくなり、ヘタに理不尽なドラマを作ろうものなら、「暗い」「見てられない」「子供が泣く」と大炎上。そして、そんな意見に制作側が迎合。表現者がバッド方向へ振り切るというのが難しい世の中になっております。
北野武さんが『アウトレイジ(=理不尽という意味)』のシリーズでバッド振り切りをしているようにも見えますが、あれは単なる「バイオレンス(暴力)」であって、けっして理不尽ではない。「傷だらけの天使」があまりにも理不尽なのは、人の情や優しやをきちんと描いているという下地があるからこそ。そう、その「ハッピーとバッドとの、落差」こそが「理不尽」ということなのでございます。
要するに、「黒」を描きたければ、紙が「白」くなければ黒は黒として認識されない。黒い紙に黒で描いちゃってるのが『アウトレイジ』ならば、白い紙に白で描いちゃってるのが、最近のハッピーエンド重視のドラマってとこでしょうか。まぁ、そこまで単純ではないとは思いますけど、ワタクシ、あえて、言い切っちゃいましょう。
国民の幸福度のアンケートを採りますと、必ず上位に来るのが北欧系の国々。日本は、いつも、かなり最下位に近いところに来るのでございます。でもね、日本に旅行に来た外国人は口を揃えて、「日本スバラシイ」「日本ダイスキ」と言いますよね。これは、どうしたことでしょうねぇ。
ワタクシ、思うに、不条理とか理不尽といった事がフタをされ見えにくくなっている世の中だからこそ、その中にあるささやかな幸せが見えにくくなっているのではないか。そう、白い紙に白い色で「しあわせ」て描いちゃってる状態でございます。あぁ、なんというもったいないことか。