店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです
太宰治の『人間失格』に、「恥の多い生涯を送って来ました」という書き出しがございますでしょ。ワタクシの青春時代も、こんな想いで打ちひしがれておりましたねぇ。何かと、劣等感の多い幼少期、そして青春期でございました。
今、自分が人を指導する立場に立ちますと、その指導される側、つまりワタクシが指導するその相手の人が大きな劣等感を引っ下げていたりすることもございます。劣等感ってのは否定的なイメージが多いものでございますが、実はプラスの要素もあるのでございます。
劣等感がマイナスに働く場合ってのは、「どうぜ○○だから」というパターン。行動を起こす前に変な先読みして思考停止してしまうのでございます。無理矢理行動させても、最初から諦め半分で行動していることが実を結ぶことは少ない。
そういうの、ワタクシは「種を蒔く」のでございます。「○○という方法もあるよ」「○○だと、もっと得をするよ」と声はかける。これが種まきでございます。その種を発芽させ、実を結ばせるのは本人次第。ワタクシは、芽が出るのを、慌てず、急(せ)かさず、じっと待つだけでございます。
こういのは、長期戦でございます。そして、散々待ったあげく、その種が無駄になる場合もございます。だから、たくさん種を蒔いておく。たくさんの種の中から、どれかひとつ実を結べば、その成功が取っかかりになるのでございます。そのひとつの成功から、信頼関係が生まれるのでございます。
さぁて、劣等感がプラスに働くこともございますよ。「劣っているのだから、他人より余計に努力が必要」と考える人もいらっしゃいます。こういう人は、常に努力を絶やさない。脇から「もう十分でしょ」って言っても、「いや、まだまだ全然ダメ」とストイックな返事が返ってくる。
ワタクシは以前より申しておりますが、「私って、なんて美しいの」って思った瞬間から、その人のブス化が始まるのでございます。どこまでやっても、「まだダメ」と思い続ける人は、このブス化に走らない。劣等感は、こういった「誠実さ」を生むという一面もあるのでございます。
また、「私みたいのを選んでくれて、ありがとう」という気持ちも、劣等感が生み出すプラス効果でございます。この気持ちは「謙虚さ」でございますね。ひとえに、どんな世界、どんな業種でも、うまく行くかどうかの鍵は「誠実」と「謙虚」なのでございます。この二つの重要な鍵を引き出すのは、実は劣等感の働きなのでございます。
劣等感というのは、両刃の剣。こじれさすと、当人をますますぬかるみに沈めることになる。小さな成功を繰り返させ、当人に自信と信頼関係が生まれるのをじっと待てるということが、指導者には要求されるのでございます。
こう考えますと、劣等感というのも、まんざらではないでしょ。むしろ、人が成長していく上で、あるいは成功する為には、絶対必要な要素だとも言えるのでございます。しかし、先ほど申したように、両刃の剣。それを生かすも殺すも、本人次第、そして、指導者次第なのでございます。