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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2019-01-10 【蜻蛉のような人だった】

テレビ東京系の番組、『和風総本家』の新しいシリーズが始まったようでございます。本日、見ておりましたら、番傘を紹介しておりました。竹と和紙で作った和式の傘でございます。この番傘を見ますと、いつもある人を思い出すのでございます。

まだワタクシがニューハーフなりたての頃ですので、今から30年以上前のことでございます。当時、まだ名古屋には大箱のキャバレーが何軒もございました。キャバレーの営業時間は深夜0時まで。一方、ワタクシの働いていたゲイバーは夜10時から朝5時までの営業。キャバレーからゲイバーへはしご酒なんてのが、よく有る流れでございました。

当時、まだ携帯電話なんてございません。キャバレーの営業終了間際になりますと、キャバレーからゲイバーに電話がかかってまいります。その電話を受けて、キャバレーまでお客様を迎えに上がるわけでございます。キャバレーのテーブルでビールを1,2杯頂きますと、そろそろ蛍の光が流れ始める頃。お客様を連れて、ゲイバーへ向かうわけでございます。

当時、キャバレーのホステスさんってのは、オバチャンが厚化粧してドレスを着ているって感じの人が多かったのでございます(個人の感想です、笑)。その中でも、あるキャバレーに、超絶級のベッピンホステスさんがいらっしゃいました。「こんなキレイな人が、どうして名古屋のキャバレーに?」ってよく思ったものでございます。

小股の切れ上がったという形容が実にしっくりくるキリリとした女性でございました。いつも和服で装い、話し方や仕草も上品かつ粋(いき)で、(今から思えば)江戸風な雰囲気を持つ女性だったのでございます。そして、天候に関係なく、必ず番傘を持ち歩いていたのが印象的でございました。

そのベッピンホステスさん、ワタクシと共通のお客様がありましたので、よく呼ばれてテーブルに座ったものでございます。ワタクシの働いていたゲイバーにも、時々来て下さいました。綺麗で、妖艶で、しかしどことなく儚(はかな)さや寂しさを醸し出す、そんな不思議な雰囲気の女性でございました。

そのホステスさん、いつのまにか姿を消しておりました。他のホステスさんの噂話を耳にするに、東京へ出て行ったそうでございます。まぁ、あれだけの美貌の人ですから、引く手あまたでございましょう。東京あたりへ出て行くのは当然、そんな感じで受け止めていたのでございます。

さて、それから何年か経ちまして、またまたホステスさんの噂話の登場。何でも、そのベッピンホステスさん、東京のホテルで首を絞められて殺されたととのこと。その話を聞きまして、記憶の中に残る彼女の妖艶さと儚さが混じる不思議な感覚が、ワタクシの脳裏に再び湧き上がって来たのでございます。

彼女が漂わせていた蜻蛉(かげろう)の様な儚さは、その運命を予兆していたのでしょうかねぇ? 番傘を見るたびに、その儚く消えていったホステスさんを思い出すのでございます。ワタクシがまだニューハーフなりたての頃のお話でございました。では、では。


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