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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2018-10-02 【半分と半分で1になる】

「ムチャクチャな脚本なのに、なぜか腹立たしくもなく、最終回まで見て満足」、先週最終回を迎えた朝ドラ、『半分、青い。』の感想でございます。視聴率もそこそこ良かったそうで、破綻したストーリーながら、なぜか気になってついつい見てしまったドラマでございました。

同じ日に生まれた鈴愛(すずめ)と律(りつ)、お互いが相手を必要とし、お互いが相手に引かれつつも、お互いが自分の想いに気づかず、お互いが恋愛に至らない。そんな二人が紆余曲折を経て、アラフォーでやっと結ばれる。そんなラブストーリーでございます。このあらすじだけ見ると、いいドラマなのですけどねぇ。

ストーリーがやや破綻気味なのは、「撮影と同時進行で脚本が出来上がっていく」という朝ドラの進行ゆえの結果なのでしょうか? 後半部分がもう少し丁寧に描かれていたら良かったのになぁと思うわけでございます。それでも視聴率が良かったのは、鈴愛役を演じた永野芽郁さんの、図太い演技のおかげでしょうか? 天然系の女優さんというのは、時として理屈を超えた安定感を見せるのでございます。

「半分青い」というタイトルが関係しているのかどうかは分かりませんが、ワタクシが見るに、鈴愛と律は、いろんなものをそれぞれ半分ずつ持っている「ふたりで一人前」の関係なのだと思うのですよね。

「あけすけ」と「口下手」、「頼りたい心」と「頼られたい心」、「想像力」と「具現化力」、「常識」と「非常識」。ふたりとも足りない所だらけの不完全なのに、その不完全同士の凸は凹へ、凹は凸へとパズルのピースがピッタリはまるようにお互いを補間する関係。そんな運命のふたりなのですよね。

こう考えると、この物語は、鈴愛と律、ふたりの物語。ふたり共丁寧に描いていけば良い感じのラブストーリーになった気がするのですが、律演じる佐藤健さんのスケジュールが厳しく、律の紆余曲折はあまり描かれてない。あぁ、このドラマの実に残念なところでございます。

同じ日に生まれ仲の良かったふたりが、それぞれの希望を抱いて別々の人生を歩むようになる。そして、それぞれが、そこそこの成功、結婚、夢破れる、離婚、というものを経験し、アラフォーで再開する。本当は、この物語はここまでが前置きなのですよね。再開後にふたりで協力して「そよ風ファン」を作るところこそが、この物語の醍醐味になるはずだったのですが、これもかなり端折られていて、実に残念、残念。

脚本が端折られたせいで、そよ風ファン作りに鈴愛はほとんど何もやっていないような感じになっております。しかし、鈴愛が漫画家修業で培った「想像力」こそが、この新製品誕生の鍵となるわけでございます。それを、ロボット製作で培った律の技術力が具現化するという流れ。ここには、「ものづくり」の原点があるのでございます。

「ものづくり」という語は、ここ数十年の工業製品の新しい流れを象徴する言葉として使われるようになっております。職人さんのきめ細かい作業の生産物であるとか、あるいは、使う人への気配り溢れる設計を施された製品などを指す語でございます。

ただね、鈴愛がこの「ものづくり」に目ざめてヘンテコな発明品を連発する部分は、ゴッソリ削られているのですよね。あぁ、これももったいない。この「ものづくり」の概念をもっと大事にしてストーリーを組み立てていったら、このふたりの「お互いを補う」という性質が顕(あら)わになったと思うのですけどねぇ。

そして、さらに、この物語には特筆すべき大エポックがあるのでございます。それが、昨日、チラッと申しました、「垂直統合型」「水平分業型」のお話でございます。実は、この「そよ風ファン」のモデルになった会社は、日本での水平分業型企業の草分け的存在なのでございます。

律は大手家電メーカーへ就職という設定、当然、垂直統合型の企業形態しか思いつかないはずでございます。そこに、水平分業型を思いつく鈴愛の想像力が功を奏すのでございます。ただ、それまでの日本には無かった企業形態ですから、様々な困難もいっぱい有ったはず。あぁ、どうして、そこのところを描かなかったかなぁ。これまた、残念なところでございます。

半分ずつしか持っていないふたりが、お互いを補い合い、共同作業でものづくりをする。この1本筋金が入っていたら、素晴らしいドラマになったと思うのですけどねぇ。NHKの連続テレビ小説『半分、青い。』の感想でございました。では、では。


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