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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2018-08-06 【今風に言うと、ブレないって言うのかな】

あるコンパニオンに、こんな提案をいただきました。

「お客様が帰られる際、フロントの前を通る時にカーテン越しでもいいからママが『ありがとうございました』とか声をかけたらどうですか」

というもの。ワタクシ、これをオープン当初はやっておりましたが、ある時期から「やらない」というポリシーで今に至っております。「あれ? どうしてやらなくなったんだっけ?」と疑問に思いまして、今、これを書いております。

「やらない」というのが自分の中で様式化してまして、その理由なんてとっくに忘れておりました。思い返しますと、その理由は、「必ず出来るわけではないから」ということ。やることのプラスより、やれなかった時のマイナスの方が問題だからでございます。

ワタクシのこの考え方の原点は、あるテレビドラマにございます。本当に小さな頃に見た、田宮次郎がスーパーの店長をやるドラマでございます。ドラマの内容なんて全然覚えてないのですが、あるエピソードだけ、強烈に覚えているのですよね。

田宮次郎扮する店長が、レジ担当の従業員に「毎回、微笑むように」と指示を出す。レジ担当の人達は、さらにもう一歩踏み込んで、微笑みながら「ありがとうございました」と声かけをするようにしていた。それを店長が見とがめてやめさせる。その時の店長のセリフが「毎回、必ず声かけが出来るわけではないから」というもの。

このエピソードが、子供心にすごく不思議でして、脳裏に焼きつくわけでございますね。三つ子の魂百までなんて申しますが、その後、何かしらの接客するお仕事に従事する度に、このエピソードを思い出すことになるのでございます。

声かけが出来た時には、お客様は喜びますよね。でも、それが「普通」なんだと思ってしまう。では、声かけが出来なかった時、お客様にどんな印象を与えるか? 「席を外してるんだ」と単純に思ってくれる人ばかりではございません。「サービスが悪くなったな」と思わせてしまう可能性もございます。

つまり、サービスにブレがあると、良いサービスが出来た時はお客様にとっては普通、出来なかったときには悪くなったと、悪い時の印象だけが残りやすいのでございます。これは、長期的に考えるとあまり良くない。結果、「良いサービス=安定したサービス」ということになるのですよね。ですから、出来たり出来なかったりするサービスなら最初からやらない方が良い、という図式になるのでございます。

以前、コンパニオンの何人かが、自分の休憩時間を削ってまで接客時間を5~6分延長してサービスするということがございました。お客様争奪の競い合いの中で、それを自分の「ウリ」にしようと無意識にやっていたのかも知れません。あるいは、単に時間に無頓着だけだったのかも知れません。

それをワタクシは、禁止いたしました。その時のワタクシの言葉が、「食べ物屋で毎回量がコロコロ変わるようなところ、足が遠のいて行かなくなるだろ」と。時間を長く感じるか短く感じるかは、お客様の主観。でも提供する側がもし安定していないと、そこから生まれるのは不信や不安だけでございます。

そんな理由で「必ず出来る」「安定」ってのが、ワタクシの接客の基本ポリシーとなっております。そしてその安定が生み出すものは「信頼」なのですよね。まぁ、しかし、幼少期に見たドラマのちょっとしたエピソードが、ここまで尾を引くとはねぇ。人生、どこで、何が、役に立つか分からないのでございます。奇々怪々なり、人生。では、では。


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