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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2018-02-07 【義理人情という複雑な感情】

昨日のWBS(ワールドビジネスサテライト)が、義理チョコを取り上げておりましたね。ゴディバが「義理チョコ廃止」を呼び掛けましたが、相変わらず義理チョコが飛ぶように売れているとのこと。取材に応じたゴディバジャパンの社長さんも、ちょいと歯切れが悪いように見うけられたのでございます。

ゴディバの主張は、「気持ちのこもっていない”義理チョコ”は、違和感を感じる」というもの。ただ、その外人の社長さん、日本語の「義理」という語を、そのまま文字通りに解釈していらっしゃるのかも知れません。日本語で「義理」と言われると、たいてい、その後に続く語は「人情」なのでございます。

辞書で「義理」を引きますと、「交際上の都合から、いやでも務(つと)めなければならない行為」という意味が出てまいります。義理というのは「建前(たてまえ)」的な行為、本心とは異なる行為なのでございます。多分、日本以外の国で「義理」といったら、この意味しか出てこないことでございましょう。

その義理と相反する言葉に「人情」がございます。人情とは、情に棹さして流されること。建前を度外視して、情という「本音」で行動するという言葉でございます。そして日本語では、この相反する二つの言葉がペアで使われることが多いのでございます。

「義理人情」という語、これは、単に二つの反対語をくっつけただけではございません。世界中で、多分、日本だけでしか通用しない独特なコミュニケーション様式美、それが「義理人情」なのでございます。

表面上は義理でやっているよ。でも、心情的には、人情という裏打ちが有るのですよ。と、まぁ、「顔で怒って、心で泣いて」みたいな状態でございます。日本の文化っていうのは、こういう二つの相反する情景を重ねて趣くのが大好き。人情の裏打ちが有ることによって、義理という堅い行為が柔らかく中和されるのでございます。

かすんだ月を見て、際立っている時の月に想いを寄せる「朧(おぼろ)月」の感覚。寂れているものを見て、盛んだった頃の様子に想いを馳せる「わびさび」の感覚。これらも、かすんだもの、寂れたものに相反するシーンを重ねて、その両者が中和した独特の感覚を生み出しているのでございます。

真実かどうかは分かりませんが、映画監督の北野武さんの逸話にこんなものがございます。フランスで北野映画がヒットし始めた時、大手の配給会社から好条件でオファーが殺到したそうでございます。しかし、北野武さん、最初に扱ってくれた配給会社への恩や義理を重視し、大手からのオファーを断り続けたそうでございます。

この人情厚い話を、当の契約している配給会社の社長に話したそうでございます。するとその社長、「俺ならさっさと、大手に乗り換えるけどな」との返事。北野武さん、ずっこけたとかずっこけなかったとか。(噂話なので、ウラは取れてません、念のため)

この話、「えっ?」と思うかも知れませんが、状況を変えてみると理にかなっているのが分かるのでございます。人情優先で行動すると、もし北野映画が落ち目になったとしても、その配給会社は売れていた時の恩で北野映画を扱い続けなければならないという理屈になってしまいます。

「利益追求」と「人情」は別物、これが世界のスタンダードなのでございます。しかし、多分、唯一、日本だけが、利益追求についつい人情を絡めてしまうのではないでしょうか。それで、甘い契約書で海外の企業と契約を交わし痛い目に遭うという日本企業が、後を絶たないのかもしれません。

まぁ、日本国内では、みんなが同じ感覚で契約を交わしたり、チョコを渡したり貰ったりしてますので、それで上手く収まっているのでございます。ただ、こと、この「義理人情」の感覚の無い人と契約などをする時には、ご注意下さいませ。ボブスレーとか、揉めちゃってるしね。では、では。


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