店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです
従業員によく、「ママは休まないんですか?」と聞かれます。ほんと、休みませんねぇ。昔、ボーイを雇っていた頃は気軽にお休みを取っておりましたが、今はほぼ1人で切り盛りしてまして、365日、まったく休んでおりません。
自分のお店が好きというのもございますが、どうもね、休めないのでございます。もし休んでしまって、それを知らずにいらっしゃったお客様がどんなに淋しい思いをするか。いつもそれを考えてしまうのでございます。これはね、ワタクシの幼少期のトラウマが、大きく影響しているような気がいたします。
母子家庭でしたので、幼少期から1人で留守番をするということが多かったのでございます。朝、母親が仕事に出る姿を淋しげに見送り、夕方帰ってきた母親に、まるでペットのワンちゃんが尻尾を振って喜ぶように抱きついたものでございます。
母親は毎朝、ヤカンに入れたお茶とお昼ご飯、わずかばかりのお小遣いを置いて出かけておりました。昼間の時間つぶしは、テレビと、ひとり遊びと、お小遣いを持って出かけること。駄菓子屋とオモチャ屋と本屋、これがワタクシのお気に入りでございました。
雑誌の発売日に、お金を握りしめて本屋へ走って行ったりしたものでございます。ただね、時として、お店が臨時休業の時がございます。子供ですから、行動範囲が狭い。他の本屋へ行くという知恵が無い。落胆して、同じお金を握りしめたまま、帰ってくることもございました。
普通ならたいしたエピソードでもないのでしょうが、普段から淋しい思いをしていた時に受けた一撃は、幼少のワタクシの心に、深いトラウマとして刻まれたのでございましょう。それでワタクシは、「居なくて淋しい思いをさせてしまう」ということに、人一倍神経質になったような気がいたします。
でもね、この幼少期の体験を、後悔などしておりませんよ。むしろ、感謝、大感謝でございます。今のワタクシの価値観のほぼ全ては、この時期に育まれたと思っております。淋しさがワタクシの感受性を、ひとり遊びがワタクシの創造性を育みました。幼い頃から”ませた”テレビ番組を見ていたのは、エロさを育んだのでしょうか(笑)。
また、こんなエピソードもございます。幼少期のある日、ワタクシはなぜか、「猿になりたい」と思い込んだのでございます。今となっては、理由不明。テレビを見たのか、何かの漫画の影響か、猛然と猿になりたいと思ったのですよね。
で、ワタクシがやったことは、オモチャのスタンプ台からインク部分を外しまして、母親がわざわざ用意してくれたヤカンの中のお茶にぶっ込んだのでございます。そして、そのインクで染まったお茶を、ワタクシは体全体に塗り始めた! お猿さんの体の色に近づけようとでもしたのでしょうか? でも、もうね、幼少にして狂気の世界でございます(笑)。
そして、部屋の中は阿鼻叫喚の世界。そこら中、スタンプのインクで汚れまくり、ほぼ半裸状態のワタクシの体は、薄いまだら模様で染められております。怖ろしいことに、当時のワタクシ、まったく罪悪感がございませんでした。そして、帰ってきた母親に、こっぴどく叱られることに。ただ、叱りながらも、子を想い用意したお茶が無残なことになっていることに、悲しい顔をしておりました。