店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです
全校生徒がグラウンドに整列して校長先生の挨拶を聞くという朝の朝礼、今でも行われているのでしょうかねぇ? これまた今はどうか知りませんが、当時は、「前へ〜進め!」とか「右にならえ!」とか「回れ〜右!」とか、まるで兵隊さんのような号令がかかるのでございます。
で、全校生徒がグラウンドに整列し、校長先生のお話の時には、「校長先生に、注目!」と号令がかかるのでございます。すると、小学生全員、その場で少し回転して、校長先生の方へ体を向けるのでございます。お話が終われば、「前に、なおれ!」だったかな(この号令はうろ覚え)、また号令がかかり、みんなその場で正面に向き直すわけでございます。
この時、時々、「前に、なおれ!」の号令が忘れられることがございます。まぁ、それでも、その後の退場時の「前へ〜進め!」の号令では、みんな前を向き直ってきちんと整列して自分たちの教室へ戻っていくわけでございます。小学生ながらも、みんな空気を読んでいたわけでございます。
ある日、ワタクシの教室の担任の先生が、「この号令の言い忘れはおかしい!」というお話をいたしました。「注目したまま『前に進め』なら、全校生徒が校長の下へ集まってくるはずだ」と、主張したのでございます。先生は、冗談で言ったのでしょうね。でも、小学生の純真な心は、それを冗談として受け止めてはいなかったのでございます。
さて、その何日か後、朝礼のグラウンドをパニックに陥れる、悪魔の条件が整ってしまったのでございます。校長先生のお話の後、「前に、なおれ!」の号令は忘れられ、退場の音楽がかかり、「一同、退場! 前に〜進め!」と号令がかかったのでございます。
整列の端の方から、順番に前へ進んで退場していきます。もちろん、他のクラスは空気を読み、真っ直ぐ前に行進して行きますよね。順番が来たとき、ワタクシの並んでいる一列全体が、躊躇(ちゅうちょ)で少し固まるのを、子供ながらに感じ取ったものでございます。
先頭に立っている子のプレッシャー、ハンパなかったでしょうね。ほんの一瞬、列全体が固まった後、その先頭の子は朝礼台の方へ向かって歩き出したのでございます。小学生と言えども、日本人的全体主義をみっちり仕込まれております。先頭が向かえば、二人目も続く、三人目も続く...
ワタクシの列だけ、朝礼台に突進でございます。朝礼台にぶつかったところで、足踏み。他の教室の生徒、先生方、何が起きたのか分からず、パニックでございます。鬼の形相で怒号する先生、少し狼狽(うろた)えながら近づいてくる担任。目が点になっている音楽の先生。
ドラマなら、スローモーションの画面に中島みゆきの『世情』がBGMとして流されるのでしょうが、残念ながら、『世情』の発表はこの朝礼台突進事件の5~6年後でございます。グラウンドをパニックに陥れた三十数名の小学生は、担任の指示により踵(きびす)を返し、無事、自分たちの教室へ行進していったのでございます。