店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです
今回指摘されたのは、「LGBT」に関する説明文。LGBTとは、レズ・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーの頭文字でございます。で、広辞苑の説明文が、「多数派とは異なる性的指向を持つ人々」とのこと。この「性的指向」という語が、くせ者だったようでございます。
レズは女性同性愛者、ゲイは男性同性愛者、バイセクシャルはどちらもいける人。この3種の人達は、自分が「男である」「女である」ということに納得している人達なのでございます。納得しつつ、好きになる人が、同性あるいは両性という「指向」なのでございます。
そして、トランスジェンダー。この人達は、自分の心の性と体の性が一致してないと考える人達。一致してないから、異性の衣装を着たりする。ほら、LGBの3種とは、全く逆でしょ。この真逆な人達を十把一絡げに「性的指向」で片付けじゃったので、クレームが入ったというわけでございます。
ややこしいのは、トランスジェンダーの人の中に、ゲイやレズやバイセクシャルの人がいるということ。つまり、トランスジェンダーってのは、ゲイ・レズ・バイセクシャルよりもひとつ上の階層の言葉なのでございます。階層の違う語がひとかたまりになって造語を作っているということに、そもそもの問題がございます。
まぁ、専門用語の説明が不正確というのは、辞書にはよくあること。今のLGBTの話題の加熱ぶりもあって、重箱の隅を突っつかれてしまいましたよね。一昨日申しましたように、紙媒体の性質上、言葉足らずだと分かっていながら、泣く泣く説明文を切り詰めるという事もございます。このLGBTの説明文がそうだったかは、分かりませんけどね。
さて、LGBTという区別、「ニューハーフ」はどれに当てはまるのでしょう。と書くと、これは難しい。ニューハーフの中に、ゲイもバイセクシャルもトランスジェンダーも存在するというのが正解でしょうか。とすると、「ニューハーフ」という語は、さらに上の階層の言葉だということになるのでございます。
ワタクシは古くから、「ニューハーフ」は「お仕事の名称」だと申しております。つまり、トラックの運転手とか、学校の先生とか、公務員とかと同じ並びで、「ニューハーフ」も存在すると考えております。辞書的に説明すると、「男性が女性の姿をすることをセールスポイントにしている職業」とでも申しましょうか。
30年くらい前のニューハーフの飲食店では、奥さんや子供さんがいるニューハーフさん(ゲイボーイ)とかよくいらっしゃいました。化粧を落とすとイケメンで、プライベートで彼女がいるという方もチラホラいらっしゃいました。まぁ、「男が好きで...」という理由でニューハーフになった人が圧倒的に多いのでは有りましたけどね。
そこで気になるのが、市販の辞書での説明文。広辞苑の第六版では、「(和声語 new half)女装した男性。また、女性への性転換者。」とございます。学研の『パーソナルカタカナ語辞典』によりますと、「女装した男性同性愛者。特に男性から肉体的な性転換を行った人」とございます。
ふむふむ、広辞苑もパーソナルカタカナ語辞典も、「一般的に思い込まれている解釈」ではございますね。でも、当事者のワタクシから見ると、明らかな言葉足らず、と言うか、間違い。だからと言って、「実は、こんな人もあんな人もいて、この説明文では不正確」と、辞書の出版社に抗議する気持ちは、毛頭ございません。
辞書の表記は、難しいですよね。語が「本来持つ意味」と、一般に使われている「用法」とが乖離(かいり)している場合も少なくございません。今では「Good」の意味で使われることもある「やばい」なんて語は、その代表例でございますね。