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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2017-12-10 【T&Rの法則】

アインシュタイン導き出した法則に「E=mc^2(イー・イコール・エムシー2乗)」という法則がございます。え~と、理数系アレルギーの方もご安心を、難しい物理の話はいたしませんよ。このアインシュタインの法則、実は、森羅万象あらゆる現象に通じる自然現象の大法則なのでございます。それでね、人と人との営みにも、こんな全てを貫く大法則がございます。今日は、それをご紹介いたしちゃいます。

落語家の「桂枝雀」さんが、「キンカンの法則」というものを述べております。キンカンとは「緊緩」と書きます。緊張と緩和のことでございますね。緊張したものが開放される時に笑いが生じるという、笑いの極意を説いた法則なのでございます。実は、この法則、笑いだけのお話では無いのでございます。

緊張を「Tension(テンション)」と英訳いたしましょう。すると、偶然の一致なのか、他の様々なジャンルとの共通点が見いだせるのでございます。音楽でテンション・コードというのは、不協和音を含む緊張感のある響きを指すのでございます。そのテンション・コードがより澄んだ響きに導かれる時、そこに感動が生まれる。このハーモニーの動きを音楽用語で「解決(Resolution)」と申します。音楽の感動は、このテンションと解決の繰り返し・積み重ねなのでございます。

テンションとは、張力のこと。偶然にも、邦楽に「張(は)り」という語がございます。「メリハリ」のハリでございます。じゃぁ、メリはなぁに?ということになりますね。「減(め)り」と書きます。メリとハリで、音の抑揚を下げたり上げたりする意味でなのでございます。そして、このメリハリという語が一般化しまして、文体や演技など、表現するもの一般に使われているのでざいます。

音楽用語では「Resolution」と申しますが、もう少し一般的にするために、緩める方は「Release(リリース)」と訳しておきましょうか。このテンションとリリース、このふたつは、およそ人の心を動かす「感動させる」という所作には必ず関わっているのでございます。逆に申しますと、この基本原理を肌で感じ取っている人は、音楽でも演劇でも何をやっても「勘が良い」と言われることになるのでございます。

さ~て、ここまでが前置き。ここからが、本題ですよぉ。「接客」「おもてなし」という所作も、お客様を感動させることですよね。ですから、テンション・リリースの法則が使えるのでございます。テンションとは文字通り、お客様のテンションを上げること。リリースとはお客様を落ち着かせることでございます。そして、この両者をどう使い分けるか、どれくらい幅広く使えるかで、接客の技術が決まるのでございます。

テンション・リリースは、笑いを取るときにも使えますが、それ以外にも、お客様を「どう感動させるか」という方向付けをするのに、非常に重要なのでございます。テンションとは、お客様を覚醒させること。リリースは逆に夢心地にすること。接客の業種によって、この方向性は違うのでございます。

飲食店では、お客様を常に覚醒させた接客をいたします。ですので、テンション重視の接客となるのでございます。一方、風俗はお客様を夢心地にするのがお仕事。当然、リリース重視の接客でございます。ただね、飲食店でも色気商売系ならばリリース重視、風俗でもSM系はテンション重視。どんな感動を与えたいのかを見極めて、テンション・リリースのバランスを取るのでございます。まぁ、これを本能でやっちゃってる人も、時々いらっしゃいますけどね。

さらに、お客様の気分の誘導に、この法則を利用したりもいたします。ノリの悪いお客様だと、まずお客様と同じテンションに自分を合わせ、少しずつギアアップして盛り上げたりいたします。また、興奮しすぎているお客様には、同様にギアダウンしながら落ち着かせたりもいたします。興奮しすぎの場合だけ、いきなりローギアで接客して強烈なエンジンブレーキをかけるのも有効だったりいたします。回転数を合わせるところ、車の運転と似ておりますね。

この「回転数を合わせる」というの、接客においては非常に重要なのでございます。回転数の合う合わないは、お客様との距離感とか相性につながるのでございます。お客様からすると、回転数の合った接客をされると、何も余分なことを考えなくていいので、気分が楽になる。お客様の回転数は様々。ですので、より広い回転数に対応出来るギア数の多いコンパニオンは、接客の守備範囲が広くなるのでございます。

「おもてなし」と言いますと、何か相手に積極的にしてあげることのように思われるかも知れませんが、ワタクシは、相手が何も考えなくてもいいほどにフィットした居心地を提供すること、それも、おもてなしだと考えております。何もしていないようで、実は頭の中で高速にセンサーを働かして回転数を調整している、そんな接客もあるのでございます。

さて、T(テンション)とR(リリース)の法則、どのくらい伝わったでしょうか。芸術、スポーツ、人づきあい、飲み会の余興と、様々な場所で使える法則でございます。ぜひ、ご利用下さいませ。では、では。


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