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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2017-05-30 【演歌にも「うなり」という技法がございます】

もう花粉症の季節は過ぎたと思うのですが、朝から鼻水が出っぱなし。何度も鼻をかんでいたら、鼻血が出る始末。鼻をかむ勢いで鼻血が出ますと、ちょいと鼻の周りが大変、いや、鼻の周りだけじゃなく、手とかも大騒ぎ(笑)。あまり他人に目撃されたくない瞬間でございます。

鼻の話が出ましたので、鼻にまつわるお話をいたしましょうか。声楽の勉強、まぁ、今風に言いますとボイトレ(ボイストレーニング)でしょうか、そのボイトレのお話でございます。

歌を歌うとき、多分、音楽の先生なんかは「鼻に共鳴させて歌いなさい」と言うはずでございます。頭蓋骨に共鳴させて歌うのが、古典的な発声法。クラシック的な音楽教育を受けた人は、まずこう言うはずでございます。

一方、ワタクシがミュージカルの勉強を始めたとき、鼻に抜かない発声法を教わったのでございます。鼻に共鳴させた透明感のある澄んだ歌声とは対称的に、鼻に抜かない声というのは、地声っぽいゴツゴツした荒い声になるのでございます。

歌声を「音色」として聞かせる場合は、そりゃ澄んだ綺麗な音の方が良いに決まっている。そう、古典的な鼻に抜く発声法というのは、声を「楽器」として扱っている考え方でございます。

では、ミュージカルでは、なぜ、あえてゴツゴツした声で発声するのか? 多分、楽器としての完成度よりも、セリフを伝えるという「演技」を重視しているからだと思うのでございます。

あまり難しいお話ばかりでは何ですから、ここでくだけたお話に切り換えましょう。ニューハーフの声なんてのも、この「鼻に抜く」という技術に注目すると格段に耳当たりが良くなるのでございます。

ニューハーフやオネェの声、女声を模しているわけだから高い声を出しているかと思いきや、それほど高くしているわけではございません。男声と女声の差は、ほぼ1オクターブ。本物の女声の音域で話そうとすると裏声(ファルセット)になってしまい、違和感が強くなってしまう。あまり、営業的な声ではないのでございます。

それで、無理に声を「高く」するのではなく、鼻に抜いた「柔らかい声」を目指した方が、営業的には有利なのでございます。テレビなどに出られているオネェの方々が、低い声なのに柔らかく聞こえるのは、そういう発声をしているからでございます。

そしてさらに、「台詞(せりふ)」には、ある興味深い現象がございます。(その人にとって)低い声(音域)を使った方が、説得力は高くなるのでございます。逆に言いますと、高い声を使うほど、嘘っぽく響いてしまう。役者さんが嘘っぽい台詞を話すとき、わざと声を上ずらせますよね。あれは、この理論を利用しているのでございます。

ここで、大問題、発声、いや発生! ニューハーフのお仕事は、出来ればちょっと高めの可愛らしい声を使いたい。ところが、高めの声を出すほどに、説得力は弱まっていく。ここで、耳当たりを取るか、内容で勝負するかの選択を迫られるわけでございます。

そして、さらに面倒くさい事実が。台詞というのは、雑味のある声の方が説得力が高まる。澄んだ声ほど、説得力が弱まるのでございます。ミュージカルが雑味のある声を優先するのも、この理論。浪曲師がわざと声を潰すのも、この理論。スナックのママさんの嗄(しゃが)れた声で繰り出す話が、妙にジンワリ来るのも、この理論でございます。

綺麗な声を出したいというニューハーフの願いと、声のこういった特性とが、実に反比例の関係なのでございます。ただ、声帯というのは成長し、形も変わっていきますので、使い続けていると馴染んでくるということもございます。ニューハーフの声は、一夜にしてならずというところでしょうか。では、では。


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