店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです
若い頃、演劇に携わっておりまして、ある台本と出会いました。『秋の歌』というもの。作者は「岸田國士」さんだったような気がするのですが、ちょいと自信がない。舞台は、とある劇団の稽古風景。稽古をしておりますと、なぜかそこへ1人の刑事が入ってくるというストーリーでございます。
時代設定は、昭和初期。劇中劇と現実が平行して進行して行くという面白い脚本なのでございますが、若さゆえと言うのでしょうか、その筋書きの中で、どうも理解不能な部分が出てきたのでございます。なぜ、唐突に、刑事が劇団の練習場所に入ってくるのか?、ということでございます。
それで、行き着いたのが「治安維持法」という法律。今でこそ、劇団がどんな過激な演目の練習をしていようが、刑事が勝手に練習場所に入ってきたりはいたしません。仮に犯罪が絡んでいたとしても、裁判所の出す礼状が必要でございます。しかし、その治安維持法の時代は、そうではなかった。『秋の歌』という脚本は、そういう時代のそういう空気を著(あらわ)していたのでございます。
さて、その思想・表現の自由の時代になってから、早70年あまり。もはや、刑事が劇団の練習風景をうかがったりはいたしません。その代わり、GPSを容疑者の車に偲ばせたりするが、これは裁判所から違法だと却下されたりしております。
あるいは、闇サイト殺人なんてことも起きております。闇サイトで知り合った見ず知らずの人達が集まって、犯罪に走ってしまう。凶悪犯罪でなくても、電話詐欺やひったくりなどでも、この闇サイトで共謀者を集ったりなんてこともある。
世界各地では、テロが起きている。本日も、ロシアの地下鉄で爆発事件がございました。テロ組織も、今やネットで同志を募る時代。もはや「共謀」の意味するものは、かつての治安維持法の時代とはかけ離れた別のものになっております。
そこで、今、国会で「共謀罪」に関して論議が進められております。与党は成立させたい。野党は廃案に持ち込みたい。与党を暴走させないのが野党の役目でございますが、しかし、こればかりは「廃案」というのは、ちょっと極論過ぎるかなと思うのでございます。