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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2017-02-19 【シンコペーティド・シーズン】

木村拓哉のドラマ『A LIFE』が、どんどん面白くなっております。最初のギクシャクした感じがなくなったのでございます。松山ケンイチが、ノビノビと演技をしております。もともといいキャラクターと間の良さを持っておりますので、本領発揮というところでしょうか。木村文乃という女優さんも、魅力的な演技をしております。豪華で経験豊かなキャストがそろっておりますので、歯車さえ噛み合えば、いいものが出来てくるのは当然でしょう。

さて、また別のテレビ番組でのお話。厚切りジェイソンさんが「日本の四季」に関して言及しておりました。世界中に四季はあるのに、ことさら日本の四季に驚かなければならない番組が多いとのこと。まぁ、これは、日本のテレビ製作者の安易さが問題でしょう。無理に感動させる、これ、つまり、「やらせ」でございますからね。まぁ、「リアクション」とも呼びますが(笑)。

日本の季節感には、世界でも希な特徴がございますから、ジェイソンさんが理解しがたいのも分かる気がいたします。確かに、日本は春夏秋冬がかなりはっきりしております。でも、それだけなら、世界中に同じような場所は多くあるのでございます。

実はですね、日本の季節感には「時間軸」があるのでございます。これは、「ワビ」「サビ」といった感覚に通ずるもの。ワビ・サビというのは、「人が居なくて寂しい様子」「古びている様子」を表しております。しかし、このワビ・サビの感覚は、風景の一瞬を切り出しているのではございません。現在から過去の風景に思いを馳せ、その移り変わりに風情を感じる感覚なのでございます。

ここに、ワビ・サビには、「過去に思いを馳せる」という時間軸を伴った感覚である事が分かります。同様に、日本人の季節感にも、この「時間軸」が多く存在しております。たとえば、春に桜を愛でますよね。西洋人は、flowerとしての美しさを賞賛する。しかし、日本人は、桜を見ながら、その桜が散っていく「運命」に思いを馳せ、そこに「儚(はかな)さ」を感じ取る。

西洋人の感動のポイントは、ビジュアル。しかし、日本人の感動のポイントは「移り変わり」なのでございます。これは、食べ物の「旬」の感性にも表れております。食べ物をその「旬」に合わせて食べるのが、西洋人。ところが日本には、「はしり」「さかり」「なごり」という3種類の旬がございます。

「はしり」というのは、その年の最初に出たもの。「さかり」というのは一番美味しい時期。そして「なごり」というのは、その食材の最後の時期。「はしり」や「なごり」の時期は、必ずしもその食材が最高の状態ではございません。「はしり」「なごり」というものは、味メインではなく「季節感」を食べるのが目的だからでございます。

さて、ちょっとお話が飛びますよ。音楽で「シンコペーション」というものがございます。規則正しいリズムよりメロディーが先に飛び込んだり、あるいは次の拍まで粘ってくい込んだりするリズムでございます。ジャズなんかでは当たり前のリズム。シンコペーションのある音楽は、跳躍感が生まれ、軽い曲調を醸し出します。日本の「旬」の感覚は、まさに季節感におけるシンコペーションなのでございます。

日本の季節感は、「移り変わり」「移ろい」を主とし、過去を偲んだり、未来に思いを馳せたりという時間の概念が必ず付きまといます。瞬間、瞬間をビジュアル的に切り出すのが主の西洋の感覚とは、チョイト違う。でも、この感覚が分からないと、日本人の奇異な季節感は、理解しがたいでしょうねぇ。

ジェイソン氏は、現在多くある日本の自己賞賛番組を、おかしい、変だ、と主張しております。うん、ワタクシもそう思うのでございます。まぁ例外的に『和風総本家』と『YOUは何しに日本へ』、この2つの番組はかなりまとも。外人の感覚主導で構成しておりますからね。それ以外の日本賞賛番組は、ほんとダメ。見ているこちらが恥ずかしくなる。

本当に日本を賞賛する番組を作るなら、もっと掘り下げて頂きたいものでございます。表面的なことを題材に持ってきて、外人を呼んで無理矢理感動させる。日本を賞賛するどころか、日本のテレビ制作の一番見にくい恥部を見せつけられているようでございます。まぁ、思いっきり勝手なことを申させて頂きましたけど、テレビ業界の人、考えてみて下さいませ。では、では。


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