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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2017-01-05 【“空間"に気がつくかどうかがキモでしたね】

昨日、「近年暖かいねぇ」なんて申しましたら、今日の夜の寒いこと寒いこと。外を歩くと、冷凍庫の中に居るような寒さでございます。いやぁ、うかつなことは言えませんねぇ(笑)。

紅白歌合戦の演出が、袋だたきに会っております(笑)。巷で騒がれているように、SMAPの出演辞退で、大番狂わせが起きたのでしょうか。「天下の紅白だから、当然出るでしょ、タモリも出るし」みたいな大あぐらをかいていたかも知れませんね。

そこへもってきて、2階のサブステージなんていう新しい試みも盛り込んじゃって、現場は阿鼻叫喚の大騒ぎだったのでしょうねぇ。サブステージは、「とりあえず、使いました」的な感じ。模型ではカッコ良かったのですが、実物を見ると、なんか使いづらそうなステージですよね。日本の芸能には「デベソ」とか「花道」という古典的な舞台装置があるのですから、それに乗っかっちゃっても良かったですよね。

デベソって言うのは、舞台のまん中が客席の方へ張り出している形。客席のど真ん中に出演者が立つことが出来る。花道ってのは、歌舞伎でお馴染み。劇場の後方と前方とを繋ぎ、客席を通り抜けることが出来る舞台。宝塚大劇場のオーケストラピットと客席の間にあるアーチ状の道は、「銀橋(ぎんきょう)」と言うらしい。

西洋の舞台は、伝統的に舞台側と客席側をはっきり区別するのでございます。プロセニアムアーチという額縁状のものを通して舞台を見、そのアーチの向こう側は物語の世界。アーチのこちら側は現実の世界。アーチに下ろされる緞帳(どんちょう)は、物語と現実を分け隔てる隔壁。そして、舞台装置は高く上方向に組み上げられることが多いのでございます。

一方、日本の伝統的な舞台は、舞台と客席をはっきり二分するような構成にはなっていない。能舞台の非対称で舞台を客席が取り囲むような配置とか、歌舞伎の花道とか。西洋式の劇場のように舞台と客席をスパッと二分する境目を、あまり意識させない形になっております。舞台装置も、あまり高さを出さず、横に平面的に作り込むものが多いのでございます。

西洋の舞台は、「絵画」を目指しておりますよね。プロセニアムアーチという額縁があり、その額縁の中にどんな素晴らしい絵柄を作り込むか、それを目指しております。一方、日本の舞台では、「空間」の演出を目指しております。舞台と客席の境目がはっきりしていないことで、観客はその空間の中で体感するのでございます。

では、お話を紅白歌合戦のサブステージに戻しましょうか。このサブステージ、やっていることは日本の伝統芸能の流れを汲んでおります。であるからして、目指すべきは「空間」の演出。つまり、本ステージとサブステージとの両者で作り出す、大きな空間こそに、意味が有ったのでございます。紅白の演出家は、そこを目指すべきだったのでございます。

でも、あのサブステージは、その目標には不向きでございましたねぇ。空間を作り出すためには、本ステージとサブステージの「一体感」が重要。「掛け合い」や「行き来」「入れ違い」といった相互作用の動きで、空間を演出するのでございますが、それが出来ない。

サブステージが本ステージを見下ろす形になっていて、ちょっと距離が有る。そして、両者の間を自由に行き来することが出来ない。本ステージとサブステージという関係と言うよりは、大劇場と小劇場が合体しているような感じ。本とサブの間に、大きなミゾが出来てしまっているのでございます。

2階席の前に作るのではなく、1階席を部分的に外し、大きめのデベソを作った方が良かったのではないでしょうか。演出家も、その方がすごくやりやすかったと思います。デベソなら、多くのノウハウが蓄積されておりますからね。

どうしてもサブステージを2階席の前に置きたいというのならば、フライングという技術で出演者を飛ばし、2つのステージ間を行き来させると、一体感が出たでしょうねぇ。ピーターパンでお馴染みの技術でございます。小林幸子あたりが、利用しそうな演出でございますね。

と、まぁ、使いにくいサブステージとは言え、生かすやり方はいろいろ有ったはずなのでございます。準備時間不足、人手不足などがあり、サブステージを作ることで精一杯だったかも知れません。ただ、「挑戦するNHK」はいいですね。挑戦には失敗はつきもの。失敗を次回の糧にしていただきたいのでございます。今年の紅白に期待! では、では。


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