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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2016-11-16 【ココロノヤサシイ、ニューハーフノコラムデス】

今日は、「名古屋薫の書店衝動買いコーナァァァ〜」。ワタクシが書店でまたまた衝動買いしてしまった本を、ご紹介いたします。それが、これ、

ご紹介するのは、左側の本。昔ながらの古典的童話『泣いた赤鬼』でございます。なぜか傍らに『BILLY BAT』の漫画本が...そう、この『泣いた赤鬼』の絵本、浦沢直樹さんが絵を描いております。中は、こんな感じ。

浜田廣介(はまだひろすけ)さんの原文に、浦沢直樹さんが絵をつけ、長崎尚志(ながさきたかし)さんがプロデュースをしております。浦沢さんと長崎さんは漫画家と原作者の関係。浦沢直樹さんの多くの名作が、このコンビから生まれております。

泣いた赤鬼に関しては、ストーリーは割愛いたしますね。まだ読んだことがない人にとっては、ネタバレになっちゃいますからね。ワタクシが子供の頃この作品を読んで、号泣しちゃいました。今でも読み返すと、目頭が熱くなるのでございます。

この『泣いた赤鬼』のテーマは「不条理」。読んだ後に、なんとも納得できないやるせない気持ちになるのでございます。あちらを立てればこちらが立たずと申しましょうか。このような不条理作品に対して、どんな価値観を見いだすかは、読者次第。読者の数だけ感想が生まれる、そういった作品でございます。

ディズニー作品は必ず大団円になるというのが、ディズニーのセオリー。悲しい結末、バッドエンドはディズニーにふさわしくないというディズニーのポリシーでございます。確かに、親子で安心して見られるという点では、素晴らしい娯楽でございます。

でも、世の中に出ると、現代社会は不条理なことだらけ。ワタクシはね、ディズニーのような無菌作品と平行して、毒のある不条理作品も幼少期から見せるべきだと思っております。一部の親御さんは「子供にトラウマを作る」といって敬遠されちゃうんですよね。でもワタクシは、子供のときだからこそ、そのようなトラウマを植えつけておくべきだと思っております。

オーディオの世界に「ダイナミックレンジ」という語がございます。出すことが出来る一番小さな音から一番大きな音までの幅でございます。ここで重要なのが、どれだけ大音量で出せるかということではなく、あくまでも最低と最大の「幅」を指す言葉であること。「ダイナミックレンジの広い曲を小さな音量で聴く」ということもあるのでございます。

人の心にも、このダイナミックレンジがございます。例えば、すごく悲しい感情とすごく楽しい感情の幅。幼少期に、この「すごく悲しい」「すごく楽しい」をどれくらい体験するかで、心のダイナミックレンジの幅が決まるような気がいたします。

ディズニーのような無菌作品は、ダイナミックレンジの上限を広げる。一方、毒のある作品は同じく下限を下げる。バランス良く与えることによって、心のダイナミックレンジが広い感受性豊かな人に成長するような気がいたします。

また、震災などで幼くして非常に悲しい思いをした人も、どうか自信を持ってご自分の人生を歩んで頂きたいと思うのでございます。「体験しなくていい悲しい思いをした」と思わずに、「心のダイナミックレンジが拡がる貴重な体験をしたんだ」と思えないでしょうか? 将来、クリエイティブな仕事に就いたとき、そのダイナミックレンジの広さがきっと役に立つはずでございます。

世界のディズニーも、勇気を持って、不条理作品に挑戦すりゃいいのにね。世界中からバッシングを受けるでしょうけどね(笑)。まぁ、日本にも「水戸黄門」や「大岡越前」なんていう無菌作品が有りますからね。いやぁ、でも、毒のある「水戸黄門」や「大岡越前」も、ちょっと見てみたいかな。では、では。


◆『泣いた赤鬼』

文・浜田廣介 画・浦沢直樹
 小学館 22cm×26cm
 ¥1,400+税


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