店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです
またテレビの話で申し訳ない。なんか仏教のテレビ番組がございまして、出演者が爆笑問題と古舘伊知郎ということで、興味深く見てしまったのでございます。いやぁ、古舘さん、仏教詳しい。お坊さんもタジタジ。ビックリしたのでございます。
その古館さん、仏教用語の「インドラの網」とインターネットを関連づけてお話しておりました。インドラの網っていうのは、世界中は編み目のようになっていて、その交点のひとつひとつに宝石が有り、ある宝石から出た光が、回りの宝石に相互作用しながら、光が網全体の宝石に広がっていくような関係、そんな、全体が相互的に関係し合って繋がっている様子を表した言葉でございます。
インドラの網って、ワタクシ、学生時代に絶対学んでいるはずなんですが、すっかり忘れておりましたねぇ。まるで、初耳のような感覚で、番組を観ておりました。この「回りに相互作用しながら、全体に影響を及ぼしている」ってのは、ここ10年くらいのインターネットをよく表していて、おもしろいのでございます。
コンピュータっての、単なる計算機でございます。1億回計算したら、1億回同じ結果が出ないと困るのでございます。そこには、曖昧さや有機的な動作なんてものは有り得ません。ゲームソフトで敵が予測不能な動きをしたり、いかにも人間的な反応をしていても、それは、プログラムの乱数発生プログラムやあらかじめインプットされている人間的な挙動パターンのなせる技でございます。乱数発生プログラムの初期値に同じ値を与えれば、何回やっても、まったく同じ挙動をするはずでございます。
そんな単なる計算機が、ネットで繋がり、相互作用する巨大な網になった今日、コンピュータは実に「有機的」な動作をしております。その代表例が、「コンピュータウィルス」。まるで、インフルエンザが蔓延するように、コンピュータウィルスも、ネット網を感染していきます。感染者が1人いると、そこを感染源として拡がっていく様も、現実とそっくりなのでございます。
あるいは、株操作。今や、株の取引は、コンピュータが自動でやっております。コンピュータですので、人間の操作のような有機的な挙動はしないかと思いきや、人間以上に挙動不審な動作をするのが、今日の株式。しかも、人間とは桁違いの速さで取引が行われますので、変化のスピードも桁違い。あっという間に、株式全体が暴走し、安全装置が働いて取引が停止する事もございます。
今やネットは、実に「有機的」な挙動をしております。スタンドアローン(コンピュータがネットに繋がっていない状態)では単なる計算機に過ぎないのですが、ネットに繋がり、何千億台というコンピュータが相互作用しながら動作するとき、それは、人間の脳の中のニューロンという組織の相互作用する関係と、似てきます。巨大なネット全体が、ひとつの「脳」として動作し始めるのでございます。
先日、ネット上の人工知能が暴走して、慌ててサーバ側が停止するという騒ぎがございました。人工知能は、世界中からのアクセスにより、どんどん賢くなっていく設定になっておりました。その影響をうけて、人工知能がナチズムに走るという現象が起きたのでございます。ナチズムを吹き込む悪い友人(多分、プログラム)が近くにいたのでしょう。こんなところも、人間の挙動と似ているのでございます。
もうね、今日では、ネットというものは人間そのものでございます。人間の脳が千数百個のニューロンの相互作用で意思決定しているように、そして、人間の体が37兆個の細胞の相互作用で生命を維持しているように、ネットにつながれた無数の「計算機」は相互作用し、その結果、ウイルスの蔓延や株の暴走といった、人間的な動作をするようになっております。そう、無数の宝石の上を、波紋が複雑に重なり合いながら拡がっていくインドラの網、それと同じなのでございます。
これは、ある意味、すごく危険な可能性をはらんでおります。人工知能がナチズムに走った例というのは、実によい実験結果だったと思います。烏合の衆が集まりますと、そこには衆愚政治が始まります。ネット上でも同じ。ネットのどこかに「高い理念」や「良識」というものでコントロールする仕組みが無いと、ネット全体が暴走します。では、その理念や良識は誰が決めるのか。その結論は、まだ出ておりません。