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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2016-06-16 【「医道」なんて言葉もあるようでございますよ】

イチロー選手、大記録、おめでとうございます。大記録達成の感想を聞かれて、「自分が目標として来たことではないので、大きな事とは思ってないです」と答えるあたり、イチローらしい受け答えなのでございます。渡米後、マリナーズ、ヤンキース、マーリンズと移籍しておりますが、どこのチームでも彼がリスペクトされ歓迎されてきたというのは、記録以上に誇らしいことではないでしょうか。

というのも、メジャーリーグで移籍とかありますと、大体、出て行くチームのファンからはブーイングが起きるものですよね。ところが、あのマリナーズからヤンキースへの電撃移籍の際、シアトルのマリナーズ・ホームグラウンドの観客は、総立ちスタンディング・オベーションでイチロー選手の移籍を祝福したというシーンがございました。ヤンキースのジータ選手が、キョロキョロとスタンドを見回して驚いていた様子を、今でも覚えております。

イチロー選手がリスペクトされ歓迎される背景には、彼の野球に対する真摯な精神があるからではないでしょうか。誰よりも早く球場に入り十分なランニングやストレッチを黙々と行い、試合後も自己管理を怠らず、道具を大事にし、シーズンオフにもその日課を崩さない。まるで修行僧の様でございます(笑)。イチロー選手が若い頃は、これらの姿勢が単なる「バカ真面目」として嫌われた部分もございましたが、彼が記録を残すに従って、このバカ真面目が「真理」として評価されてきたのでございましょう。

ただね、日本人は、このイチロー選手の姿勢をそれほど特別だとは思わないですよね。高校球児の野球への取り組みとか見ておりますと、「それが当たり前でしょ」とも思えてくる。これには、スポーツに関する日本人独特の感性があるからでございましょう。ずばり、「道(どう)」という考え方でございます。柔道に剣道、野球道、相撲道、あと、茶道、華道、北海道、おっとと、最後のは間違い。でも、なんか「〜道」って多いですよね。この「道」という考え方が、実に日本の文化のベースになっているのでございます。

「心・技・体」なんて申しますが、「技」や「体」だけでなく、この「心」重視するのが「道」という考え方。これが、まぁ、世界的にも特殊なんでしょうねぇ。だいたいスポーツの世界ってのは、記録がすべて。どんな心で臨んでいようが関係ない。だから、ドーピングしてでも記録を残そうとする。ところがですね、柔道とか剣道とかを始めますと、まず最初に厳しくされるのは「礼儀作法」。野球でも、高校球児がグラウンドに入るときなど、帽子を脱いでお辞儀をする姿が見受けられます。「〜道」というものは「何を行うか」より先に「どんな精神で行うか」ということを優先するのでございます。

すると、茶道や華道も、ちょっと面白く見えてくる。お茶を入れる技術、花を生ける技術なんて、今やネットでも勉強できます。しかし、それらを行う「精神」に注目すると、狭い茶室での独特の空気感は「おもてなし」の精神、花を生ける人の緊張感には「生きとし生けるものへの賛美」を感じ取ることが出来るのでございます(ここまで書いてきて、ふと気づきましたが、花を生けるという語は「生」という字を当てるというのも、今さらながらに納得したのでございます)。

話をイチロー選手に戻しますと、この「スポーツに精神世界を持ち込む」という考え方、当初、アメリカ人には異様に見えたことでしょう。しかし、イチロー選手がアメリカで実績を積むにつれて、イチロー選手のやり方を真似するメジャーリーガーが出てきたのは、興味深いですよね。そして、イチロー選手の凄いところは、単なる精神論で片づけていないところ。野球を科学的に分析し、どんな筋肉が必要なのか、どんなスケジュールでトレーニングすべきか、その様に理詰めで考え、それを不言実行していることでございます。

欧米人ってのは、こういった「精神性」「スピリチュアル」なものを、日常生活と切り離して「非日常」と考えているのでしょうか。ですので、スピリチュアルと日常とが融合したときに、思いも寄らぬ反応を示すことがございます。それが、「こんまり」こと近藤麻理恵さんの書かれた『人生がときめく片づけの魔法』という本が、欧米で大ヒットしているという現実でございます。

この本の特徴は、「『ときめき』があるかどうかで、不要品を分ける」「不要品には『ありがとう』と感謝をしてから、捨てましょう」としていること。日本人の感覚からすると特別なことではないのですが、この「ときめき」と「感謝」に、欧米人はスピリチュアルなものを感じたのでございましょう(そもそも「ときめき」を正確に表した英単語がない、どう訳したのか興味深いのでございます)。実際に欧米の書店では、スピリチュアルの棚に並べられているそうでございます。この本とシャーリー・マクレーンが並んでいるのでしょうか? 面白いのでございます。

日本では「道」という考え方が日常生活に溶け込んでいるのであまり意識しませんが、諸外国から見ると、この「道」の存在が、いかにも日本を日本たらしめている様でございますよ。まぁ、トイレにまで神様がいる国でございますからね。欧米人にはさぞかし奇異に見えることでございましょう。逆に、日本人はこの考え方をもう少し自覚すると、外からやって来た人との軋轢を減らせるのではないでしょうかねぇ。朝青龍とか白鵬とか、いろいろ有りましたからねぇ。

さて、ここからは余談。ワタクシが東京の風俗店で働いていた頃、ちょうど野茂がメジャーリーグで大活躍をしておりました。それで、とある雑誌で「ノー毛(のーもう)で大活躍」なんて企画が立ち上がりましてね、お店のみんなでアソコの毛を剃った覚えがございます。ノー毛って言うよりはパイパンなんですけどね。ワタクシとしては、ちょっと迷惑な企画でございました。とまぁ、懐かしい思い出でございます。では、では。

◆参考

『人生がときめく片づけの魔法』
 『人生がときめく片づけの魔法2』
  近藤麻理恵(konmari)著 サンマーク出版 各¥1,400


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