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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2011-12-05 【不条理のススメ】

4ヶ月ほど前、東海テレビの『ぴーかんテレビ』という番組が不適切テロップで打ち切りになったのは、まだ記憶に新しいことでございましょう。その後、その空いた時間枠にはフジテレビ系のドラマの再放送が流されておりました。この再放送ってのがなかなかあなどれなく、『古畑任三郎』のシーズン2とシーズン3を、みっちり鑑賞させていただきました。そして、その古畑以後は『アルジャーノンに花束を』が再放送され、先日、その最終回を見終わったのでございます。

ワタクシ、このドラマは初見でございます。ダニエル・キイス著の原作は若い頃に読んでおりますし、映画も観ております。しかし、その救いようのない空しい結末に、テレビドラマ化されたときには敬遠しておりました。なんでしょうかねぇ、結末の空しさを知っているからでしょうか、あるいは、世界的な名文学ゆえに、それが促成栽培のドラマ化でよくあるような稚拙な演出や演技で汚されるのを危惧していたのでしょうか。2002年の放送時には全く避けていたものを、今回、その再放送でじっくりと鑑賞させていただいたのでございます。

原作に比べると、ドラマの方はちょっと温かい救いのある結末にしているようでございます。もちろん、本筋は原作を逸脱していないことに安心いたしました。お茶の間ドラマとして放送するには、あまりにも救いのない結末には出来なかったのでございましょう。涙を誘いつつ、ほどよいテイストのドラマに仕上がっていると思うのでございます。実は、その出来のほどを心配しながら観た今回の再放送でございましたが、非常に好感が持てるドラマだったのでございます。特に、主役のユースケ・サンタマリアをはじめ、出演者全員が実に誠実な演技をしております。誠実ってのはいいですねぇ。誠実の反対語は何でしょうかねぇ? 「あざとい」でしょうか?

ワタクシ、小さい頃に映画化されたこの作品を観て、多分、トラウマのようなものを持った気がいたします。全く救いのない結末、不条理なその内容に、ひどく傷ついたような気がするのでございます。しかし、そんな不条理の中に「現実(リアリスティック)」を見いだしたのでしょうか、ワタクシはね、どんどん不条理映画を好む大人になってしまったのでございます。あぁ、三つ子の魂百までとは、よく言ったものでございます。しかしながら、そういった不条理映画やドラマは、興行収入や視聴率の面で不利にならざるをえない。実際、ドラマ『アルジャーノンに花束を』の2002年放送時には、あまり視聴率が良くなかったようでございます。最近のテレビ局は財政的に厳しいので、確実に数字の取れる番組を、ということで、ネームバリューのあるタレントを起用した明るい内容の、結果的に促成栽培のドラマが多くなっているのではないでしょうかねぇ(特に民放)。

ということで、今日は「不条理のススメ」でございました。不条理を伝えるには、発信者側に誠実さが必要でございます。その誠実さに、観た人は感動するのでございます。不条理ドラマ、バンザ〜イ。

↓ダニエル・キイス著『アルジャーノンに花束を』早川書房


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