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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2010-09-29 【バーンスタイン+手塚治虫】75.6kg

ちょっと面白いDVDが発売されましたので、買ってみました。リンク先の写真を見ていただければ分かりますが、DVDとコミックのセットでございます。映画ではこういった組み合わせは時々あるのでございますが、このDVDの場合はクラシック音楽の演奏。それも、ハイドンのミサ曲というややマニアックな曲。どうしてクラシック音楽とコミックがセットされたか、それにはこんなエピソードがございます。

セットされているコミックは、手塚治虫の『雨のコンダクター』という短編。この短編は、実際の出来事をもとに描かれております。時は1973年1月19日、ベトナムに出兵している米軍が撤退を初めた頃でございます。翌日にニクソン大統領の就任式を迎えるというその前夜、アメリカのワシントンで、ふたつの演奏会が催されたのでございます。ひとつはニクソン大統領就任の前夜祭として、チャイコフスキーの大序曲『1812』が。そしてもうひとつは、レナード・バーンスタインが有志を集め、教会で入場料無料で行ったハイドンのミサ曲の演奏会。同じ夜に催されたふたつの演奏会を漫画にしたのが、『雨のコンダクター』という手塚治虫の作品でございます。

ニクソンの前夜祭で演奏された『1812』という曲は、ロシアがナポレオンを倒して大勝利をおさめた模様を描写した快活な曲。それに対しバーンスタインが指揮をしたハイドンのミサ曲は、別名「戦時のミサ」。砲声や進軍ラッパを描写したような部分があるのでこの通称が付けられておりますが、その題名とは裏腹に、自らの行いを悔い改め、神の憐れみを乞い、平和を希求するという内容。いかにも、世界平和を願っていたバーンスタインらしい選曲でございます。

手塚の漫画によりますと、ニクソン前夜祭の演奏会がおざなりであったのに対し、バーンスタインのミサ曲には、雨模様にもかかわらず、教会の外に1万2千人もの聴衆が溢れるほどだったそうでございます。急きょ教会の外にスピーカーを何十本も置き、傘を差しながら教会の外でたたずむ聴衆にも演奏を聴かせたとのこと。そのような様子が、実に丁寧に描き込まれた絵で、23ページの短編にまとめ上げられております。

このDVDの演奏はその1973年のものではなく、1984年にドイツの教会でバーンスタインの演奏を録画したものでございます。ともあれ、このミサ曲とコミックの組み合わせ、世界平和を願い続けたバーンスタインと、人間愛をテーマにし続けた手塚との、美しいコラボレーションが楽しめる製品でございます。地味な曲ですが、もしよろしければ聴いてみて、そして読んでみて下さいませ。

●バーンスタイン+手塚治虫『雨のコンダクター』
  〜ハイドン戦時のミサより(DVD+コミック) ¥3,780
 (ニホンモニター 株式会社 ドリームライフ事業部)
  DVD56分+コミック23頁

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