«前の日記(2010-08-24) 最新 次の日記(2010-08-30)» 編集

薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

2008|05|06|07|08|09|10|11|12|
2009|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2010|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2011|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2012|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2013|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2014|01|02|03|04|05|06|07|08|10|12|
2015|01|03|12|
2016|01|02|03|05|06|07|08|09|10|11|12|
2017|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2018|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2019|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2020|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2021|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2022|01|

2010-08-28 時計がなかった頃には当たり前でした

相変わらず暑い日が続きますが、ワタクシ、数日前から“秋風”の香りを感じております。暦の上の「立秋」は8月の上旬、今日あたりは風が涼しくなるという「処暑」を少し過ぎた頃でございます。自分の感覚と暦とを透かし重ねてみると、時々、その微妙な符合のしかたに驚いたりすることがございます。

8月下旬と言えば、そう、夏休みの宿題。子供の頃は宿題の山を前にして憂鬱になる時期でございました。最近はこの時期に自由研究用の教材がいろいろ出回るようで、東急ハンズなどでそういったものを見つけると、別に発表する場所が有るわけでもないのに、ついつい買っちゃったりするのでございます。今年の夏も、買っちゃいました。なぜかシースルーの時計の教材が気になって。それから、『大人の科学』というシリーズから「和時計」というものが出ておりまして、あ〜、これも衝動買い。どうもメカニカルなものに弱いようでございます。

シースルーの時計は、大きな歯車が見えていて非常に面白いのですが、やはりそこは子供向けの教材、ゼンマイを一杯に巻き上げても数時間で止まってしまう。さらに、「カッ、カッ、カッ、カッ」と、まるでメトロノームのような大きな音。まぁ当たり前ですが、とても実用的ではなく、飾って楽しんでおります。

もうひとつの「和時計」。これは大当たり。簡単に説明しますと、時間を刻む天秤のようなもの(天符:てんぷ)が、昼用と夜用で2本付いております。1周24時間の針がちょうど180度回転するたびに、その昼用と夜用の天符が切り替わるのでございます。これは何を意味するか? そう、江戸時代の時間は「不定時法」と言われるもので、早い話が、「日の出はいつでも朝の6時、日没はいつでも夕方の6時」と決めてしまうわけでございます。あぁ、6時というのは分かりやすく現代の表記に言い直しただけでございます。この不定時法、諸外国には全く例を見ない日本独自の文化だそうでございます。

で、夏と冬では昼と夜の長さが違いますよね。そこで、夏は昼用の天秤をゆっくり、夜用の天秤を早く動くように調整し、1日の帳尻を合わせるのでございます。当然、冬はその真逆の設定。昼と夜の長さは毎日少しずつ変化していきますので、昼用、夜用の天秤棒の調整も、二四節気ごとに少しずつ変えていかなければなりません。結構面倒くさい上に、あまり正確ではないのでございます。そんな時計のどこがいいのか? さぁ、それをこれから説明いたしやしょう

よく、「夏は日が長い」とか言いますよね。天文学的には、昼間の時間が長いのですから当たり前でございます。ところが、「日の出は朝6時、日の入りは夕方6時」と決めている不定時法では、「昼は時間がゆっくり進み、夜は早く進む」という感じになるのでございます。そう、この和時計は、その昼と夜との時間の進む速さの“感覚的な違い”を実際の針の動きに反映させてしまうという、何とも“人間寄りな”時計なのでございます。

もっとも、針を等速で動かし、で文字盤の方に細工を施した方がはるかに構造は簡単なのですが(実際、そういう和時計も有る)、それをやらないところに、この時計の「粋(いき)」が有るのでございます。そして、世の中には、実際にこの不定時法で生活をしている人もいらっしゃるとのこと。夏は長い昼をのんびり過ごし、冬は夜長を楽しむ。日の出とともに行動を開始し、日没を一日の区切りとする。毎日を時間で追われる生活をしていると難しいですが、この不定時法による生活パターン、ちょっと魅力を感じるのでございます。ワタクシも現場を離れ年金生活をするころには(って、いつの話だ?)、この不定時法の生活を意識してみましょうかねぇ。


«前の日記(2010-08-24) 最新 次の日記(2010-08-30)» 編集