«前の日記(2009-09-10) 最新 次の日記(2009-09-14)» 編集

薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

2008|05|06|07|08|09|10|11|12|
2009|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2010|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2011|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2012|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2013|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2014|01|02|03|04|05|06|07|08|10|12|
2015|01|03|12|
2016|01|02|03|05|06|07|08|09|10|11|12|
2017|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2018|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2019|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2020|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2021|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2022|01|

2009-09-11 依存症というのは「病気」なんだと知って下さい

さて、昨日分の続きでございます。こういった重たいテーマの場合は、非常に筆が重たいのでございます。言葉を選び、何度も文を練り、結構時間をかけて書いております。昨日は「他者危害排除の原則」のお話でございました。「自分がされて嫌なことは、他人にもやらないように決めようね」という原則でございます。この原則を当てはめますと、「人はなぜ殺人をしてはいけないか」なんて問いにも、一筋の解答を見いだせたりいたします。動物の世界は弱肉強食、人間の世界でも「戦争」と名前がつけば殺人も合法。にもかかわらず近代国家が殺人を禁止する根拠は、この法則なのでございます。

前置きはこのぐらいにしておきまして、本題に入りましょうか。ニューハーフ業界に長いことおりますと、友人・知人の中には、覚醒剤とちょっと深いおつきあいをしている人も、ほんの何人かおりました。そして、そのような友人とワタクシとのバタバタした交友経験からワタクシが得たこと、それをお話しするのでございます。もし不幸にも、あなたの友人・知人・配偶者・愛人などが覚醒剤をやっていたらどのように接すればいいか、それをお話ししたいと思います。

もちろん覚醒剤は国家的に禁止すべき悪行でございます。ただ、その倫理観を闇雲に振り回してはいけません。倫理観を振りかざした上から目線で接すれば、ますます事態は悪化いたします。そして、相手と心中するだけの覚悟がないのであるなら、何も言わずに離れていくという方法もございます。愛情や思いやりといった精神論で接すると、間違いなく泥沼にはまっていきます。覚醒剤中毒を治せるのは専門の施設や専門医だけ。第三者はその誘導や手助けが出来るだけでございます。その距離を置いた立ち位置をキープする冷静さが持てない人は、不用意に距離を縮めることは危険でございます。

専門医しか治せないと書きました。よく「やめられないのは意志が弱いから」と考えがちでございますが、これは大きな間違い。麻薬は人間の意志力の根幹に働きかけるものでございます。ですから、麻薬に溺れている人に「やめろ」というのは、足に麻酔を打たれた人に「立ち上がって歩け」と言っているようなものでございます。やめさせる第一歩は、まず自分がそのような十分な知識を身につけること。そして、相手ではなく自分が専門医に相談する。その後に、本人をどのようにして専門医に合わせるか、施設に入れるかという長い道のりがあるのでございます。

本気でやめさせようとすると、こんな大変なプロセスを踏むことになるのでございます。ですから、残酷な言い方ではありますが、「ばれて捕まった方が幸せ」という考え方も出来るのでございます。はっきり言って、麻薬中毒を治せるのは、病院か刑務所だけと思っております。きちんとした治療を受けてやめられたのに、ちょっとした誘惑からまた始めてしまう人もいます。やめたけど、後遺症で長いこと苦しむ人もいます。ここまで見届ける覚悟が出来ない人間関係なら、早い段階で離れていく方が賢明でございます。残酷な言い方ですが、二重遭難を防ぐためにも、これだけの身構えは知っておくべきでございます。

さて、麻薬もお酒やたばこと同様に、量を決めて上手に付き合っている人もいたりします。こういった人は特に世間に迷惑をかけるわけでもなく、「自分の責任でやっているのだから問題ないじゃないか」と思われるかも知れませんが、お酒がそうであるように、上手に付き合っていた麻薬がある瞬間から狂気へのスイッチに変貌してしまうことがございます。「嗜好品が依存症にかわる瞬間」でございますね。こういったことがございますので、「本人が上手にやっているな」と思っても、楽観してはいけないのでございます。

最後に、ある本を紹介いたします。あの「夜回り先生」で有名な水谷修さんが書かれた本でございます。この本では、覚醒剤と同列に、タバコ、お酒、シンナー、合成麻薬などを総括して「ドラッグ」と扱っております。タバコやお酒でも、依存症になってしまうと麻薬と同じように作用してしまいますので、この扱い方には賛成でございます。そして、非常に分かりやすい文章で書かれ、すべての漢字にはふりがなが振られております。これは、著者の「ドラッグ教育は中学では遅すぎる」という信念のもと、小学校の高学年ぐらいでも読めるように配慮してあるからでございましょう。また、けっして子供向けの本というわけでもなく、大人が読んでも構いません。ドラッグの基本的な、そして間違っていない知識を身につけることができる良書でございます。

-----

『ドラッグなんていらない』
 出会ってしまう前のきみに伝えたいこと
 水谷修著 東山書房 ¥2,000+税 19cm×26.5cm 56ページ

«前の日記(2009-09-10) 最新 次の日記(2009-09-14)» 編集