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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2009-08-06 憎しみは伝えず、事実だけを後世に

本日は八月六日。「ヒロシマ」の日でございます。漢字で「広島」と書けば地名を指しますが、カタカナで「ヒロシマ」と書いた場合の多くは、広島市への原爆投下を意味いたします。この日にちなんで、本日はある漫画を紹介いたします。

「ヒロシマ」にちなんだ漫画といえば『はだしのゲン』が有名でございます。つい先日、『はだしのゲン』全巻の英訳が終了したとのニュースがございました。が、本日紹介するのは『はだしのゲン』ではございません。「こうの史代」という広島市出身の女性漫画家の方が描かれた『夕凪の街 桜の国』という漫画でございます。

この『夕凪の街』という作品は、30ページの短編漫画でございます。舞台は「ヒロシマ」から10年後の昭和30年の広島市内。「ヒロシマ」を題材にした漫画は原爆投下の前後を舞台にしたものが多いのですが、この作品は原爆投下の10年後の物語でございます。これから読まれる方の興味を削いではいけませんので、あえて内容は申しません。投下から10年を経てもなお、人々の運命を変えてしまう原爆の怖さを、暖かい画調で淡々と描いております。

この漫画家の作品には、『この世界の片隅に』という漫画もございます。こちらは広島から呉に嫁いだある女性の原爆体験を単行本全三巻で描いたものでございます。「ヒロシマ」を題材にした作品を何作か描いているこの作者ではございますが、原爆を体験しているわけではございません。むしろ、『はだしのゲン』のような漫画を読んで育った世代でございます。『はだしのゲン』の初出からすでに36年。戦争や「ヒロシマ」を後世に伝える表現者は、すでに第2世代、第3世代に入っているようでございます。

オバマ大統領が、核廃絶に向けての演説をいたしました。「世界で唯一、核を使用した国の責任」ということだそうでございます。核を使用した国に責任があるのならば、「核を使用された国」にも責任が有るのではないでしょうか。『はだしのゲン』であるとか、この『夕凪の街』といった作品などは、多くの国の言語に翻訳されて、もっともっと世界に配布されるべきだと思うのでございます。

もはや日本は技術大国として世界に名を知らしめております。けれど、非核三原則の存在を、世界中のどれほどの人が知っているでしょうか。あるいは、「当然日本は核を保有しているだろう」、そう思っている海外の人も少なくございません。日本がどのような体験をし、どのような姿勢で戦争や核といったものに向き合っているかは、日本みずからが発信しなければ誰が知り得るでしょう。誤解を恐れず、無理解・無関心を恐れず、根気よく発信し続けていくことは、核を使用された唯一の国の責任ではないでしょうか。

憎しみは伝えず、事実だけを後世に伝える。それが大事だと思います。

『夕凪の街 桜の国』(双葉社 103頁 840円)


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