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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2009-06-12 風俗嬢の憂鬱

商売には必ず「広告」というものが関わってまいります。広告を出さなければ、誰もそこにそんなお店があるとは気づかないからでございます。お店はこの広告で顧客を増やしていくのでございますが、広告と顧客の増減の関係、風俗店には独特のものがございます。

同じニューハーフのお店でも飲食店の場合は、たまたまいらっしゃったお客様が、次にいらっしゃる時にはお友達を連れてくるということがございます。水商売(飲食店)では、この「友達の輪」というものが、顧客拡大の強い要(かなめ)になるのでございます。と同時に、連れてこられたお友達は、担当が決まるまではすべての従業員からの営業攻勢を受けることになるのでございます。飲食店がそれほど大々的に広告を打たなくても経営が成り立つのは、この芋づる式、おっと失礼(笑)、「友達の輪」式に顧客拡大を実行しているからでございます。

一方風俗店では、飲食店のような友達の輪というものは、ほとんど期待できないのでございます。特にニューハーフ遊びというのは、みなさん他人には内緒にしたがる方が多く、お店を気に入っていただいても、それをお友達に紹介するということにはならないようでございまして、そこでお店はどのようにして顧客を拡大するかといえば、もっぱら広告に頼るのでございます。それゆえ、風俗店というのは飲食店などに比べまして、広告の量というのは非常に多くなるのでございます。

さて、お店にいらっしゃったお客様は、「いらっしゃる度」に「ある選択」をいたします。どのような選択かと申しますと、「もう一度来てもいいな」と思うか、「もう二度と来ない」と思うかの二者択一でございます。この選択を、お客様は来店の度にするわけでございます。飲食店であれば、「もう一度来てもいいな」の選択肢の中に「友達にも教えてやろう」という要素も含まれるわけです。この「新規の友達の数」が「もう来ない」顧客の数を上回れば、顧客は末広がりに増えていくことになります。ところが風俗店では、その「新規のお友達」が期待できません。ということで、風俗店の場合、この二者択一は「現状維持」か「顧客減少」のどちらかにしかならないわけでございます。

つまり、風俗店の顧客というのは、何もやらなければどんどん減る方向にしか変化しないのでございます。それを盛り返す方法は店内にはございません。いらっしゃったお客様にどれだけ気に入ってもらえても、それは「現状維持」の要素にしかならないからでございます。では、それを盛り返すにはどうするか。それが「広告」の力でございます。飲食伝では、顧客を増やす要素も減らす要素も全て店内に存在します。ところが風俗店では「店内には減らす要素のみ、増やす要素は店外の広告で」という二元的な構造になっております。

店内に「増やす要素がない」というのは、ある種の「むなしさ」を感じます。と同時に、失敗が許されないという「緊張感」もございます。そして、常に「全体が見えない」という孤独感もございます。こんな「むなしさ」「緊張感」「孤独」、こういったものが風俗嬢の憂鬱なのでしょうかねぇ。


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