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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2009-03-25 ちょうど4年が経ちました

あるとき、あるジャングルの、ある村で、それはそれはかわいらしいライオンの子が誕生しました。その子の名前は「レオ」。レオというのは、いちばん強いライオンにつけられる名前です。

その名のとおり、レオは強くたくましく育っていきました。しかし、ひとつだけほかのライオンと違うところがあったのです。実は、レオはヒョウとライオンとのあいだに生まれたレオポンという変った種類のライオンだったのです。

都会の動物園ならば、レオはきっと人気者になったことでしょう。しかし、ジャングルの中では、珍しい動物というのは仲間はずれになってしまうのです。レオはライオンの仲間にも、ヒョウの仲間にも入れてもらえませんでした。レオは悲しくて涙がでました。ひとりぼっちになってしまったレオは、旅に出ることにしました。

いくつかのジャングルと、いくつかの川を越えると、ある村に着きました。その村にはライオンもヒョウも見あたりません。「ここでなら誰かと友達になれるかもしれない」。そう思うとレオはうれしくなりました。

レオは、村の住民と少し仲よくなりました。けれど、あるちょっとしたことで、レオはツメとキバを見せてしまいました。すると村の住人は驚いて逃げていってしまったのです。この村の住民はツメとキバのある動物を見たことがなかったからです。

悲しくなったレオは、またいくつかのジャングルと川を越えて、ちがう村にやってきました。

その村では、旅の途中でつかまえたたくさんの獲物をみんなにプレゼントしました。しかし、村の住人は誰もお肉を食べなかったのです。お肉は腐り始め、住民は嫌な顔をしました。レオはまた悲しくなって、その村を去りました。

レオは、友達が欲しくてしょうがないのに、その友達をつくる方法を知らなかったのです。

またレオはひとりになりました。レオはひとり旅の途中、空に浮かぶ雲を見上げながら考えました。「空を飛びたいな。あのフワフワの雲に乗りたいな」。そんな思いをはせながら、さらにいくつかのジャングルと、いくつかの川を越えていきました。

ひとりでジャングルの中を行動するというのは、とても危険なことです。ひとり旅を続けているあいだに、レオはどんどん警戒心が強くなってしまいました。そして、かわいらしかった丸い目も、とんがった野生の目に変ってしまっていました。

ジャングルの中では、何日も獲物がとれない日が続いたりします。何日もお水を飲めない日が続いたりします。そんな生活をしているうちに、レオの内臓はボロボロになってしまっていました。そして、ときどきお腹が痛くなったりするのを、レオは少し気がかりにしていました。

長い長い旅の末、ある居心地のよさそうな村に着きました。しかし、すでに野生の鋭さを持ったレオは、ここの住民とも衝突してしまいました。ひとり旅に慣れてしまっていたレオは、また違う村へ行けばいいと考えていました。

そんなレオを見かねて、村の長老がレオに話しかけました。「レオや、おまえは本当は正義感が強く、思いやりのある子なんじゃぞ。しかし、その思いやりを押し売りしてしまうじゃろ。自分の思いを半分伝えたら、相手の思いを半分聞いてみてはどうじゃ?」。

レオは、友達の作り方がすこし分かったような気がしました。そして、この村にずっと住みたいと思うようになりました。自分のねぐらをつくり、村の仕事もきちんと手伝うようになりました。

友達も増え、いつしかレオのとがった目は、かわいい丸い目に戻っておりました。食べるものの心配はもうありませんでしたが、さらにひどくなるお腹の痛みだけが、レオの唯一の気がかりでした。

実は、レオの内臓はそのころ、もう限界に来ていたのです。ある朝、その内臓が最後の悲鳴をあげました。レオのお腹を突き刺さるような痛みが走り抜けました。

レオは、しばらくその痛みをがまんしておりました。すると、スッと楽になったのです。レオは、自分の心から自分の体が離れていくのを感じました。気がつくと、レオは空を飛んでおりました。

レオは、なんだかワクワクとうれしくなってきました。その喜びが、空を飛べたためなのか、痛みから解放されたためなのか、あるいは友達をつくることができたからなのか、それは、レオ自身にもわかりませんでした。

レオはうれしくて、村の中を何回も走り回りました。そして、ゆっくりと、上空へ駆け上がっていきました。駆け上がる途中、ちょっと下の方をのぞきこみ、そして村のみんなに言ったのです。「みんな〜、楽しかったよ〜、ありがとう〜」。

そして、レオはフワフワの雲でしばらく遊んだ後、さらに上へ駆け上がっていきました。そう、やさしく微笑みながら・・・

(2005年9月発売『シーメール白書』Vol.75、『名古屋発あなたへ』第22話「レオ」より転載)


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