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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2009-01-10 急須のあの部分を、鶴首っていうの知ってました?

一年ほど前から、ペットボトルのお茶をやめて急須で熱いお茶を入れて飲んでおります。以前は昔ながらの瀬戸物の急須を使っておりましたが、その急須を割ってしまってからは、ガラス製の急須を買い求めて使っております。この瀬戸物とガラスの素材の違いが、お茶の味わいに、これまた影響するようでございます。

まず、お茶というものはあまり熱いお湯を使っても美味しくないのでございます。急須と湯飲みを温めた後のすこし温度が下がったお湯の方が、お茶の甘みがよく出るのでございます。これが瀬戸物の急須ですと、急須がほどほどにお湯の温度を下げてくれるのでございますが、ガラス製のものですとあまり温度が下がりません。甘みの少ないトゲトゲしいお茶になるのでございます。

いろいろ工夫した結果、ガラス急須でお茶を入れるときには、急須の中に最初から冷凍庫の角氷をひとつ入れておくという方法に、落ち着いたのでございます。さてこれで、お湯の温度の問題が解決し、ガラス急須で美味しいお茶が飲めるかと思いきや、いや、どうもお茶が薄い。なかなか濃いお茶が出にくいのでございます。

実は、このお茶の薄さは、急須の形状に原因があるようでございます。瀬戸物の急須は細い鶴首からお茶が出るようになっていて、しかも鶴首と本体のつなぎ目は、お茶っ葉をこすために網目状になっております。細い鶴首からゆっくり流れ出るお茶は、その網目状のところで溜まったお茶っ葉をくぐり抜ける形になるのでございます。ところが、ガラス急須は鶴首のないポット型で、本体とフタとの隙間の注ぎ口から、勢いよく出てしまうのでございます。

勢いよく注ぎたくてもゆっくりとしか注げない構造、その細い鶴首の形状に、お茶を美味しく入れる急須の秘密があるようでございます。例えるなら、産道を苦しい思いをして生まれ出た赤ん坊が、たくましく育つようなものでございましょうか。美味しいもの、たくましいもの、楽しいもの、そういったポジティブなものには、その前に苦しい段階があるようでございます。今、何かと苦しい時期でございますが、細い鶴首を抜け出した後、きっと素晴らしく美味しいお茶が飲めるはずでございます。急須の鶴首のことに思いを馳せながら、そんなことを考えておりました。


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